学校出たてではロクに使えず、何年もの時間をかけて育成する必要がある整備士など航空機のエンジニア。このエンジニアをめぐって最近、国土交通省が中途採用を加速しており、中小エアラインからは恨み節が聞こえてくる。

 国交省が中途採用を進める理由は、三菱重工が2014年の納入を目指している「MRJ(三菱リージョナルジェット)」など、国産航空機の審査・検査態勢を充実させるためだ。

国交省が技術者を続々採用で<br />困り果てる中小エアライン国交省がエンジニアの中途採用を進める背景には、三菱重工が2014年の納入を目指す「MRJ」など国産航空機の存在がある。Photo:AFP=JIJI

 国産航空機の審査・検査を手掛ける航空機技術審査センター(愛知県)の定員はかつて17人だったが、09年には40人、10年には57人、さらに今年4月には73人にまで拡大する予定だ。

 国内には現在、航空会社が50弱ある。日本航空(JAL)や全日空(ANA)のように有名ではないが、地域でのフライトを担っている中小航空会社が数多くあるからだ。

 JALからも整備士の大量流出が続いているが、中小エアラインと違い、大企業ゆえに専門化された仕事しかしてきていないため、使い勝手が悪い。「何でも屋」的に技術を磨いてきた中小エアラインのエンジニアの方が人気がある。

 また、小規模エアラインの場合、エンジニアの給料は年収500万円にも満たない。国交省に転職すれば、場合によっては2割以上も給料が上がる。

 「デフレの影響で10年ほど前から、官民で給与水準が逆転し、中小のヘリコプター運航会社も都道府県や警察に人材を引き抜かれて困っている」(業界関係者)といい、中小エアラインやヘリコプター運航会社のあいだでは今、一番頭の痛い問題なのだという。

 養成に時間もお金もかかる航空機エンジニアだけに、簡単に代わりを調達するわけにもいかない。中小エアライン経営者の悩みは当分続きそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)

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