岳人さんは悲痛な胸のうちを振り返ります。自分の娘が「殺すぞ!」とわめき立てる声を義父に聞かせるのは、避けられるものなら避けたかったのですが、あの手この手を尽くしても義母が認めようとしなかったので致し方なかったのです。声を再生しつつ文章テキストを指でなぞり、状況を説明しました。

 さすがの義母も妻が包丁を持ち出したことを認めたものの、妻が包丁を突きつけた先は自分の首であって娘さんではないと言い張ったのですが、もはや包丁をどこに向けたかは関係ありません。

 我が子の食事が遅いくらいで「包丁を持ち出したこと」自体が問題であって、子どもの命を危険にさらすような母親に任せておくわけにはいきません。

 だからこそ、私は岳人さんにICレコーダーによって包丁の件を知った段階で児童相談所に相談するよう促してました。特に妻のところへ事情を聞きに行ってほしいと児童相談員に頼むことが大事なので、このことを忘れずに義理の両親に伝えるよう、岳人さんに念押しをしておきました。これは妻の行為を告発するのが目的ではなく、義理の両親にとって何より大事なのは「世間体」だということを見越した上での対策です。

 なぜなら、児童虐待の現場に義母もいたのだから、責任が義母に飛び火する可能性があります。義母は万が一にも、虐待の事実がニュースで報じられ、周囲から後ろ指を指されるようなことは避けたかったはずです。詳しくは後述しますが妻の実家は地方のちょっとした資産家。一地区は全員、顔見知りという村社会なので「村八分になりたくない!」という心理が、より強く働くのでしょう。義理の両親はようやく観念し、岳人さんが児童相談所への申し立てを取り下げることを条件に、娘さんを岳人さんへ引き渡すことにしたのです。

自動車と勝手に処分された私物
取り戻せるのか

 次に義母と妻が勝手に持ち逃げした岳人さんの自動車、無断で処分した私物はどうしたら良いのでしょうか?まず夫婦が婚姻期間中に築いた財産は夫名義であれ妻名義であれ、法律的(民法758条)は夫婦の共有です。ただし、独身時代の財産、両親等からの贈与、相続財産については法律上、特有財産(民法762条)として扱われるので夫婦の共有ではなく、片方の固有財産です。これらの原理原則に当てはめると自動車と私物は独身時代のものなので、岳人さんの特有財産だということは明らかです。