ガス業界最大手の東京ガスは、今年4月のガス市場完全自由化で、事業環境の激変に直面する。電力会社という新たなライバルと戦うことになるが、勝ち残る鍵は何なのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

 2017年4月から始まるガス市場完全自由化は、東京ガスにとって、創業以来最も大きな環境変化だと言っても過言ではない。

 日本のガス市場はすでに完全自由化されているLPガス市場と、一部に規制が残る都市ガス市場に大別できる。都市ガス市場は1995年に大工場や大病院といった、ガスが大量に使われる大口市場から段階的に自由化されてきた。その中で最後に規制が残っていた家庭向け都市ガス市場が、17年4月に自由化される。新規参入者の増加で競争が起こり、多種多様な料金メニューが生まれることと、ガス料金の低下が期待されている。

 家庭向け都市ガス市場ではこれまで独占的に事業を行えたため、都市ガス事業者は競争のない無風状態の中で、楽に利益が得られた。中でも東京ガスは、人口が集中している最も肥沃な市場である関東圏を、独り占めできる立場だった。

 それを表しているのが図(2)のガス販売量と顧客数の推移だ。気温の上下が暖房需要に影響し、ガス販売量を増減させているが、この数年大きな変化はない。顧客数の微増は、主に郊外でのガス導管の新設によるものだ。

 だが、4月以降もこの傾向が続く保証はない。すでに東京電力ホールディングスが家庭向け都市ガス市場へ7月に参入することを決めたほか、関西電力や中部電力も準備を進めている。16年4月の電力自由化の際、新規参入者は最もうまみのある関東圏、すなわち東京電力管内の市場を草刈り場とした。今度は、家庭向け都市ガス市場がそのターゲットになると予想されている。比護隆・東京ガス財務部長は「ガス販売量と顧客数は導管の延伸によって伸びるだろうが、これまでのペースよりも落ちる可能性がある」と話す。