今や石炭を抜き、石油に次ぐ1次エネルギーとして重要度が増しているLNG(液化天然ガス)。その輸入において、日本のエネルギー史に残る第一歩が先日、静かに踏み出された。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)
2017年は日本のエネルギー史上、大きな転換点として記憶されるだろう。
1月6日、新潟県上越市の中部電力上越火力発電所に、日本で初めて米国産のシェールガス由来のLNG(液化天然ガス)が到着した。東京電力ホールディングスと中部電の共同出資会社であるJERA(ジェラ)が、米シェニエール社のルイジアナ州の基地からLNGを調達。今回、そのLNGを中部電の上越火力に納入した。
米国では、それまで技術的に困難だったシェール層に眠る原油と天然ガスを採取する技術が開発され、12年から一気に原油と天然ガスの生産量が増える、いわゆる「シェール革命」が起こった。LNGに関しては、20年までに生産能力が年間約6000万トンにまで達するとみられており、これは15年の世界のLNG取引量の約25%に相当する量となる。エネルギーの輸入国だった米国が一転、輸出国となったのである。今回の輸入によって、日本は初めて「革命」の恩恵を受けられたわけだ。
ジェラは17年、米国産LNGを約150万トン調達する予定で、18年後半までに全調達量の1割に当たる約400万トンまで増やす予定だ。主に中部電や東電に、調達したLNGを卸供給する。
日本にとって今回の輸入は、単に革命の恩恵を受けられた以上の大きな意味を持っている。
一つはエネルギー安全保障上のメリットだ。日本ではLNGは主に発電用の燃料と、家庭などで使うガスの原料として消費されているが、全量を輸入に頼っている。そんな日本にとって、調達先を拡充し多様化することは、エネルギー確保の観点から極めて重要だ。
もう一つは、日本が輸入するLNGの調達価格が多様化されることで、こちらの方が大きい。
現在、日本が輸入しているLNGの調達価格は、基本的に全て原油価格と連動している。金融商品でもある原油の価格は、リスクマネーの流入により需給とは関係なく乱高下する。実際、08年にはそれが主因で1バレル145ドルにまで暴騰した。日本のLNG調達価格は、こうした影響をもろに受けてしまうリスクを抱えていた。