原油価格の急落によって多くが採算割れに陥ったシェールオイルとシェールガス。生産コストが賄えず、中には倒産する企業も出てきたが、そんな状況を変える“救世主”として日本企業のある商品が今、ひそかに存在感を増している。中堅化学メーカー、クレハのプラスチック「クレダックス」だ。

当初、クレダックスは炭酸飲料のペットボトルへの使用が期待されたが、開発の途中でシェール掘削用途という金脈を掘り当てた
Photo:REUTERS/アフロ
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 ただのプラスチックではない。クレダックスは、水や微生物によって二酸化炭素と水に分解されるプラスチック(ポリグリコール酸〈PGA〉樹脂)なのである。その上、「1平方センチメートルに約1トンという圧力にも耐えられる」(上山隆久・クレハPGA部長)高強度の優れものだ。

 シェールオイルやシェールガスは、地下のシェール(頁岩)層に水平に開けた1~3キロメートルの穴に火薬で亀裂を入れた後、穴に水を勢いよく通し、水圧で亀裂を広げることによって採取する。

 クレダックスは、水圧を効率よくかけるため、穴を数十メートルずつ仕切る道具に使われている。

魅力的なコスト削減効果

 これまでの掘削では金属の仕切りが使われてきたが、金属は役目が終わると2~3日かけて、ドリルで壊して破片を回収する必要がある。おまけに、「回収時に仕切りの破片が亀裂に詰まり、生産量を減らしてしまうリスクがある」(西畑直光・クレハPGA事業部長)のも悩ましい。

 その点、クレダックスなら、生産が開始されるまでに水によって分解が進むので回収しなくてよい。もちろん亀裂の“目詰まり”とも無縁だ。