大麻取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕された元女優の高樹沙耶容疑者(本名・益戸育江・53歳)が昨夏の参院選で医療用大麻(薬)の必要性を訴えて出馬したことは記憶に新しい Photo:AFLO

昨秋、元芸能人の逮捕でも話題になった「医療用大麻」解禁の是非の議論が続いている。医療用大麻の解禁については安倍昭恵首相夫人が前向きなことでも知られている。実際に、現在の治療では治らない慢性疼痛の患者にとっては「藁(ワラ)にもすがる」存在である。果たして、医療用大麻は有効なのか。専門医である東京慈恵会医科大学附属病院ペインクリニックの北原雅樹医師に取材した。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

医療用大麻解禁を訴えた
安倍昭恵首相夫人

「あのぅ、慢性痛には医療用大麻を使用したらいいんじゃないでしょうか?」

 か細い声で質問を発したのは、安倍昭恵首相夫人だった。

 2016年9月29日、衆議院第一議員会館国際会議室で開かれた『慢性の痛み対策議員連盟総会』でのことだ。

 その日は、米国や北欧、中国など、世界各国から慢性痛診療に取り組む医師や研究者が集まり、最新の研究成果や、かなり後れをとっている日本の現状等について報告がなされ、主催者側からの「最後に、ご意見やご質問はありませんか」との呼びかけに対して、安倍氏が手を挙げたのだった。

 ただ、この質問はいささか唐突だった。なぜなら会議では、「慢性痛の原因は非常に複雑である。その治療は、学際的治療(多くの専門職が連携して行う)でなければならない」という結論が出ていたからだ。

 つまり、「○○さえあればいい的な、単純な治療でなんとかなるほど慢性痛は甘くない」と、居合わせた誰もが考えていた。安倍氏はかねてより、"医療用大麻解禁論者"で知られている。この総会に参加したのも、"持論"を広めるためだったのかもしれない。