米ニューヨークダウが2万ドルを超えるなどトランプ相場が続いている。しかし、株価上昇の主因は世界経済回復。保護主義と排他主義の負の面が顕在化すれば、市場の動揺は避けられない。
大統領に就任すれば、政策が少しは穏健な方向に軌道修正されるだろうという期待は完全に裏切られた。
トランプ米大統領は就任演説で「保護が偉大な繁栄と強さにつながる」「国境を取り戻す」と高らかに宣言した。TPP(環太平洋経済連携協定)離脱、NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉、メキシコ国境沿いでの壁建設など、就任直後から矢継ぎ早に“看板政策”を実行する動きを見せている。
保護主義と排他主義が米国経済の足を引っ張ることは確実だ。
みずほ総合研究所とみずほ銀行は、中国からの輸入品に45%の、NAFTA構成国であるカナダとメキシコからの輸入品に35%の関税をかけた場合の輸入額の変化を試算した。2014年を基にすると、4099億ドルほど輸入金額が増加する。これは、米国のGDP(国内総生産)の2.2%に相当する。輸入額が増加する分だけ、米国のもうけであるGDPは縮小する。トランプ氏の政策は、こうした負の面も併せ持つ。
犯罪歴のある不法移民の国外退去も、重要政策の一つだ。米国の現在の失業率は4%台後半。これ以上労働力を増やせない“完全雇用”の状態にあるとされる。この状態で労働力を強制的に減少させれば、経済にマイナスになる。「200万~300万人とされる犯罪歴を持つ不法移民を退去させれば、米国経済は1.1%縮小する」(小野亮・みずほ総合研究所主席エコノミスト)とみられる。高関税と合わせ、3.3%の縮小となる。