「立ち飲み」というと、カウンターだけの店内で低価格のお酒とおつまみを提供する、お財布に優しい居酒屋をイメージするだろう。しかし最近、ビジネスマンや若い女性の間で流行しているのが、「スタンディングバー」だ。
たとえば、麻布十番の駅から徒歩1分の場所にある「ビストロ十番スタンド」は、連日近隣の大使館勤務の外国人や若い女性、ビジネスマンで賑わっている。店内は赤ちょうちん系のものとはほど遠い、外国のお店のような雰囲気になっており、いわゆる「立ち飲み屋」とは全く別の空間だ。
このビストロ十番スタンドを運営している麻布スタイルは、飲食店経営を専門とする会社。この十番スタンドのほかにも、表参道や青山、浜松町、川崎などに同様の店舗を出店。また、アジアン・ダイニングやパスタ専門店も経営している。
ビストロ十番スタンドの特徴は、低価格で本格的であること。有名ビールメーカーであるカールスバーグのアンテナショップとなっており、390円から生ビールを楽しめる。また、料理は常時100種類以上用意されており、すべて店内での手作りとなっている。
麻布スタイル代表の猪野悦史氏は、元スポーツインストラクターから飲食業界へ進出した経歴を持つ。このビストロ十番スタンドについてうかがった。
「スタンドは立ち飲みという意味ではありません。誰もが立ち寄れる場所という意味を込めています。わかりやすく言えば、ガソリンスタンドと同じ意味ですね」
麻布十番というと高級なイメージがあるが、そこで誰もが気軽に立ち寄れる場所を提供したい。そういう思いが「スタンド」という言葉に込められているのだ。解放された店頭は、誰もが入りやすいスタイル。事実、女性の1人客も多いという。また、待ち合わせに使われることも多い。それだけ、気軽に利用できる店ということだろう。
「こだわっているのは、店内の雰囲気と料理ですね。ふらっと1人で寄っても、居心地がいい場所を提供しています。また、料理は全て本格的なものばかりです。すべて店内で作っており、乾き物などはありません。十番スタンドでは、生地から作っているピザや鍋などもお出ししております。青山や表参道、川崎の店舗では、自家製麺による生パスタもメニューにあります」
実際にメニューを見ると、種類が豊富な上にどれも本格的。そして料金も良心的。これならば、1人ではなくカップルや仲間とも気軽に立ち寄れる。十番スタイルでは、奥にイス席も用意されており、ちょっとしたパーティをすることも可能となっている。
「利用していただけるスタイルは様々。一次会でも二次会でも三次会でも対応できます。単なる立ち飲み屋ではありません」
不況により、外食も控えめになりつつある昨今、このような「安くて美味しくて雰囲気のいい店」は貴重な存在。しかも、このようなスタイルのスタンディングバーが都内に増えてきている。
徹底的に安く飲める立ち飲み屋も魅力的だが、たまには少しだけ高級な気分を味わえる、このようなスタンディングバーに行ってみるのもいいかも。1人で気軽に立ち寄り、おいしいお酒と料理でリフレッシュ。そんな仕事帰りの一杯が、明日の活力に繋がるはずだ。
(三浦一紀)