今、世界各国は、正論に徹するか、米国に近づくかで揺れている。EU単一市場からの離脱を表明した英国は、米国との関係強化に動いた。イスラエルも米国の保護主義政策を評価している。しかし、入国制限の発令などを見る限り、トランプ政権の政策には間違っている部分がある。

 トランプ政権下、米国はグローバル化の流れから脱却し、需要の一人占めを重視し始めている。需要の囲い込み、保護主義を重視した政策が進むと、1930年代のように、経済はブロック化に向かう。

 それは、貿易競争につながり、世界経済を縮小均衡に向かわせるだろう。足元の世界経済を見渡すと、新興国は中国を中心とする債務問題や低成長トレンドの中で需給ギャップを解消できていない。そのため、世界全体で供給が需要を上回っている。賃金も増えづらい。政治は目先の民衆の満足を高めることに向かいやすい。

 こうした環境下、わが国は多国間の経済連携の意義、自由貿易体制のメリットをアジア新興国などと共有し、保護主義の動きに待ったをかけなければならない。真剣にそうした取り組みを進めることができないと、米国と中国などの対立が激化し、双方の陣営になびく国が増える中で、わが国は孤立する恐れがある。

 この状況は、ある意味では、わが国にとってアジア新興国との関係を強化するチャンスといえる。米国に代わりアジア各国の意見調整を進めることで、国家間の連携の重要性を国際社会に示す機会になるからだ。

 今後、安倍政権が、米国には国際安全保障の強化、グローバル化の意義を冷静に伝え、アジア各国とTPPに代わる「新しい経済連携」の策定を目指していくことが、中長期的な日本経済、そして、アジア地域の安定につながると考える。

(信州大学教授 真壁昭夫)