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「AIの反乱」は、もはや現実の危機か

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第424回】 2017年2月14日
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IT業界でもAIの安全利用を模索

 IT界の大企業が主導して2016年に設立したのが、「Partnership on AI(AIにおけるパートナーシップ)」というNPOだ。アマゾン、グーグル、マイクロソフト、IBM、フェイスブック、アップル、ディープマインドなどAIに関わる大手IT企業に加えて、国際学会のAAAI、市民権保護を目的として活動するACLU(アメリカ自由人権協会)、安全なAIを研究するNPOのOpenAIが関わっている。評議員会のメンバーには経済学者も加わっており、社会,経済、技術の各方面から人々と社会に貢献するAIのアプローチを探る。

 また、「Future of Life Institute (未来生活研究所)」は2014年にボストンで設立された研究者のグループ。ジャーン・タリン(スカイプ共同創業者)、マックス・テグマーク(MIT教授)、アンソニー・アグイーレ(UCサンタクルーズ教授)らが共同設立した。

 アドバイザリー委員会にはステファン・ホーキングやイーロン・マスクも加わっている。AIの脅威を警告した2015年1月に研究者らによる「AIに関するオープンレター」を主導したのは、この研究所だ。AIだけでなくバイオテック、原子力、温暖化などの各分野での研究をサポートするための補助金も出している。

 同研究所は今年1月に『Beneficial Artificial Intelligence (BAI) 2017』会議を開催し、AI研究や倫理、価値について23項目の原則を提言している。

 上記以外にも、カリフォルニアのバークレーを拠点にする「Machine Intelligence Research Institute(MIRI)」は、2000年というかなり早い時期から「フレンドリーAI」を探究組織として活動を続けてきた。支援者にはレイモンド・カーツワイルやピーター・ティールらがいる。

 またイギリスでは、オクスフォード大学やケンブリッジ大学にもAIや先端技術の安全性を探る研究所が数ヵ所ある。

 こうした研究所は互いに競合するわけではなく、研究者が重複しているケースもあり、研究成果は今後共有されるだろう。それによって、研究は加速化されていくはずだ。

 汎用人工知能研究はまだ黎明期にあるが、先に研究者や企業が望ましい方向性を模索することの重要性に気づいたことは、大きな希望だ。われわれ一般人もこうした研究から出てくる成果を注視する必要があるだろう。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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