高まる国際政治の不透明感
わが国はどう対応すべきか

 トランプ大統領の排斥の動きがどうなるか、今のところ不透明だ。ただ、そうした米国の民主主義の力は、衝動的、感情的な対応を繰り返す政治にブレーキをかける一つの方法になることは間違いない。

 オーストラリアのターンブル首相との電話会議でトランプ氏が感情的になり、一国の首相を非難したことは、「米国とは冷静に議論できない」という各国の警戒感を高めた。それを放置すれば、国際社会の連携は後退する。早い段階で、米国はトランプ政権の暴走を止める手立てを考える必要がありそうだ。

 それができないと、米国だけでなく国際社会にも重大な問題が懸念される。自国第一主義を掲げる米国に接近したり、対抗するなど、世界各地で自国のことだけを考える政治が進みやすい。それは各国を保護主義に向かわせ、需要の囲い込みや貿易競争の激化につながるだろう。世界経済が縮小均衡に向かう可能性は上昇している。

 不透明感高まる状況の中、わが国は自国の立場を明確にしていかなければならない。重要なことは、安全保障面では米国との関係を維持しつつ、多国間での経済連携が世界経済の安定に不可欠だとの考えを各国と共有することだ。

 米国のTPP離脱を受けて、すでにニュージーランドは米国抜きでのTPP発足に向けて各国に働きかけ始めている。わが国の政府も、同様の取り組みを進めるべきだ。米国への信頼が低下し始めた中、多くの国が米国に代わって経済連携を促進するリーダーを求めている。TPPは日米を中心とする連携だった。それだけに、潜在的なわが国への期待は強いはずだ。

 わが国がアジアを中心に政治、経済の連携を目指した議論をリードできないと、状況は更に悪化すると考えるべきだ。中国が主導する経済連携の動きに取り残され、わが国が孤立する展開もありうる。

 それを防ぐには、米民主・共和両党の首脳との関係を強化しつつ、トランプ政権の動向を冷静に見守り、同時にアジア各国との関係を強化する取り組みが不可欠だ。大変な取り組みではあるが、それくらいの覚悟がないと、今後の国際政治の混乱を自力で乗り切ることは難しいかもしれない。

(信州大学教授 真壁昭夫)