現在の日本にすっかり根付いたイベントの一つに、女性が男性に(最近は逆も)チョコレートを贈る日の「バレンタインデー」がある。義理、本命、自分へのご褒美、友チョコ、オレチョコ……。あるいはそんな風習とは無縁という人まで消費のあり方は多様化しているが、デパートやスーパーやコンビニでは、「バレンタイン商戦」という“死闘”が一様に繰り広げられている。特にノルマを課せられることも多いコンビニのアルバイト従業員にとって、こうした流通・食品業界の催事(イベント)は「憂鬱以外の何物でもない」という。(ライター 奥田由意)
相次ぐイベントキャンペーンで
ノルマ達成と自腹購入を強いられる
「販売数ゼロの場合はペナルティとしてポイントカード入会を30件取ること。それもできなければシフト1回(無償で)入ってもらいます。とくにAさん、Bさん、Cさん、Dさん。ほかの人にも毎回同じようにやってもらっていて、今回は甘い顔をできませんので。よろしくお願いします」――。
あるコンビニエンスストアで、従業員全員に配られた書類の文言だ。
これは夏の「土用の丑の日」に合わせたうなぎ予約獲得キャンペーンについてのものだが、コンビニアにはお歳暮、節分、バレンタインデー、ひな祭り、お花見、母の日、土用の丑、お中元、ハロウィン、ボジョレーヌーボー解禁、クリスマスなど、季節ごとのイベント関連商品がある。
しかも、仕入れは本部から買い切りのものも多く、期間内に売り切らなければならない。そのしわ寄せがアルバイト従業員に及ぶ。まず、ノルマが設けられ、その達成が求められる。未達の場合は「自腹購入」を明に暗に強要するという形でのしかかってくるのだ。