毎年恒例のバレンタインデー。フランスでしか買うことのできない高級チョコレートがこの時期だけ輸入され、年間のチョコレート売上高の2割以上をバレンタインデーが占めるなど、その経済効果はあなどれない。とはいえ、販売できる時期が限られていることで、「食品の無駄」が出ていることは否めない。職場などでは「義理チョコ」を渡す女性だけではなく、ホワイトデーで「倍返し」を強要される男性側も『心理的負担』を感じる人は少なくない。そもそも業界側が仕掛けたイベントを、消費者が「鵜呑み」にして続ける時代なのだろうか。(食品ロス問題専門家、消費生活アドバイザー 井出留美)

薄っぺらく感じた
日本のクリスマス

 2017年2月7日、農林水産省の、日・ASEAN食産業人材育成官民共同プロジェクトの一環で、タイのカセサート大学で8ヵ国の学生たちに講義をしてきました。自由時間にバレンタインデーの話になりました。日本から来ていた方が「タイではバレンタインやるんですか?」と大学の先生に聞いたところ、「ティーンエージャーだけよ、わたしたちは(そんなの)やらないわよ」と答えました。それを聞いて、私は青年海外協力隊時代に滞在していたフィリピンでのクリスマスを思い浮かべました。

 フィリピンでは「ber month」(月の英語名の末尾にberが付く月)はすべてクリスマスとも言われます。すなわちSeptember, October, November, December。9月から12月はすべてクリスマス。実際、私が滞在していたときも、9月ごろから街ではクリスマスの飾り付けが始まり、クリスマスソングが流れていました。

 当時、隊員だった私は、赴任先の大学の、何人もの先生から「うちにおいで」とパーティに誘われました。カトリックとプロテスタントの違いはあるものの、国民のほとんどがキリスト教徒であるフィリピンの人たちにとって、クリスマスはイエス・キリストの降誕を祝う大切な日です。「丸いものは縁起がいい」と言って、りんごや、丸い形のチーズが食卓を飾り、学生だけでなく大人たちもその日を心待ちにしている様子に、心の底から祝う気持ちが伝わってきていました。