学業のかたわら、アルバイトで不足している生活費を稼ぐ学生は数多い。近年、正社員を削減する流れの中で、社員並みの仕事を押し付けられる「ブラックバイト」が横行している。(ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

もはや「バイト感覚」は死語
ブラックバイトに苦しむ学生たち

 アルバイトのシフトと大学のテストがかぶったら、バイトを選ぶ――。近年、こうした学生が増えていて、大学側は頭を痛めている。正社員も真っ青の拘束で学生アルバイトをこき使う「ブラックバイト」が増えているからだ。

コンビニエンスストアと外食産業に加え、個人指導塾がブラックバイト相談件数トップ3だという
Photo:MIXA-Fotolia.com

 以前から、「契約書通りに賃金が支払われない」などの悪質バイトはあった。しかし、最近のブラックバイトは、そうした単なるコスト削減を狙った悪事にとどまらず、学生に正社員並みの仕事や労働時間を要求したり、ノルマを課したり、果てには簡単には辞められないように追いつめるといった特徴がある。

「もはや『バイト感覚』という言葉は死語」。ブラックバイトユニオンで相談員をしている坂倉昇平氏は、こう話す。「いやなら辞めたらいい」という安直な助言では解消できない問題なのだ。

 たとえば、首都圏でおよそ50の教室を展開する某学習塾では、雇用契約書に「代わりの人間を見つけないで年度途中に辞めた場合は、損害賠償を請求する」という、驚くべき一文が入っている。文章をよく読まずにサインをしているバイト学生がたくさんおり、後で困る学生も少なくない。

 休みに関する記述も細かい。曰く「テストへの出席で休むのは認めるが、テスト勉強や実家への帰省で休むのは認めない」。さらに、「遅刻をすれば、その授業分の給料はゼロ」。大学3年生のある男子学生は、大学の授業が長引いて遅刻し、タダ働きを強いられた。当然、違法行為だ。

 やっかいなのは、こうしたおかしな規則を、さも正当であるかのように堂々と明文化し、学生に承諾させていること。まじめな学生ほど、「契約したのだから」と思い詰めて滅私奉公をしてしまう。学生の社会経験の浅さを見越した、悪質な手口だ。