「あらゆる組織が、人を雇用する。人に対して力を行使する」(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
組織が人の力なしに目的とする成果を上げられるのであれば、人に対して力を行使することが許されるはずはない。
組織と従業員との関係は契約上のものであり、あらゆる契約のなかで最も狭義に解釈されるべきものである。ドラッカーは、両者の関係は、あえて雇用主と被用者の関係にとどめておくべきだという。
このことは、組織と従業員のあいだに愛情、感謝、友情、敬意、信頼があってはならないということではない。いずれも価値のあるものである。だが、いずれも組織の側が勝ち取るべきものである。
物的な生産手段を所有する者は組織である。知的な生産手段を所有する者は従業員である。組織と従業員は互いを必要とする。一方だけでは生産活動はできない。
しかも、忠誠は報酬だけでは獲得することはできない。組織は、知識労働者たる従業員に対して、成果と自己実現のための卓越した機会を提供することによってのみ、忠誠を獲得することができる。
知識労働者は専門家である。ということは、限定された分野ではあるかもしれないが、自らの世界については上司よりも詳しいことを意味する。彼らはいかに地位が低くとも、自らの専門分野については雇用主よりも優位に立つ。
「組織が働く者に対してもっている権力と権限に関するかぎり、そこに存在するものは、成員ではなく、被用者でなければならない」(『断絶の時代』)