「優れたリーダーは、“私”とは言わない。意識して言わないのではない。“私”を考えないのである。いつも、“われわれ”を考える。チームを考える。彼らは、自分の仕事がチームを機能させることだということを知っている。責任を引き受け、逃げることをしない。成果は“われわれ”のものとする。考えることは、なされるべきことと、チームのことだけである。そこから信頼が生まれ、なされるべきことがなされる」(ドラッカー名著集(4)『非営利組織の経営』)
ドラッカーは、リーダー用の資質などというものはないと言う。リーダーにはいろいろなタイプがある。しかし、リーダーたるために必要とされる姿勢は、いくつかある。
第1が、人に聞くことである。聞くことは、スキルではなく姿勢である。
第2が、自らの考えを理解してもらう意欲である。そのためには何度も言い、身をもって示すことである。
第3が、言い訳やごまかしをしないことである。何事にも本気であることである。
第4が、仕事の重要性に比べれば、自分など取るに足りない存在であるとの認識である。仕事と自らを一体化しないことである。仕事とは、リーダーよりも重要であって、リーダーとは別個の存在である。
ドラッカーは、真のリーダーについて、こう言う。「私の知っているほとんどのリーダーが、生まれつきのリーダーでも、育てられたリーダーでもなかった。自らをリーダーとして作り上げた人たちだった」。
トルーマン大統領は、ルーズベルト大統領の突然の死によって大統領になったとき、今米国のリーダーとしてなすべき最も重要な仕事は何かを考え、急きょ、不得意だった国際問題に取り組み、旧ソ連の封じ込めに成功した。
マッカーサー元帥は、自分よりも頭のよい者はいないはずと自負しながらも、部下の言に耳を傾けて最強のチームをつくり上げた。気性には合わなかったが、それがリーダーの役割だということを知っていた。
「リーダーたるものは、献身しつつも個たりえなければならない。そのとき仕事もうまくいく。自らを仕事の外に置かなければならない」(『非営利組織の経営』)