2012年頃に登場し、わずか5年で全法人の約4分の1以上、個人事業主と合わせて100万を超える事業所が導入している「クラウド会計」。本連載では、税理士と公認会計士がインタビュアーとなり、クラウド会計を活用して生産性を上げている企業事例をご紹介している。

第5回は、中小企業の経理部の問題点と、それを解決するためのクラウド会計の活用法について、上場企業40社以上の決算早期化を成功させ、100社以上の中小企業の黒字化、資金繰り改善を実現してきた公認会計士・税理士の武田雄治氏に聞いた。(構成/加藤年男)

経理部と経営者が「分断」されていると
企業は成長できない

 会社の数字を司る「経理部」だが、数字を集めてまとめる処理に追われてしまい、経営に対して数字から得られる示唆を進言するなど「ビジネスを生む」活動をしているところは少ないのではないか。まずは現状の問題点を確認する。

武田雄治 (たけだ・ゆうじ)
公認会計士・税理士。関西学院大学商学部卒。武田公認会計士事務所所長。「決算早期化」「経理業務改善」のスペシャリスト。 これまで上場企業40社以上の決算早期化プロジェクトに携わり、「残業・休日出勤ゼロ」「監査報酬の数百万単位での削減」「経理機能一元化・シェアード化による本社コストの数千万円単位での削減」なども達成させた。『経理を変えれば会社は変わる』の信念のもと、クライアントに『真の経理部』を作る手伝いをしている。

武田 いまの企業の経理部の問題点は、小規模企業から上場企業まで、企業規模を問わず経理部が経営と分断されていることに尽きると思います。経営者は数字を見ていないし、経理部は経営者に情報をしっかりと伝えていない。税務申告の必要があるから仕方なく日々の経理業務をやっている、という会社があまりにも多い。しかも人員不足で業務が経理部長に属人化し、その下の経理部員もモチベーションを落とす、という悪循環に陥っています。

河江 武田さんは「決算早期化コンサルティング」で数々の企業の経理を変革していらっしゃいますが、そういう企業に対して、どんなことをされているのですか?

武田 ほとんどの場合、経理部がやるべきことをきちんとできる「仕組み」をつくるだけです。それだけで分断されていた経営者と経理部が密接につながって決算が早く出せるようになり、かつ経営者にタイムリーに数字が伝わるようになる。結果的に企業は黒字体質に変わっていくのです。