「顔見知り」から「感じのいい人」へランクアップ!

齋藤 孝(さいとう・たかし)
1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション論。テレビ、ラジオ、講演等、多方面で活躍。
著書は『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』『コミュニケーション力』(岩波新書)、『現代語訳 学問のすすめ』(ちくま新書)、『質問力』(ちくま文庫)、『語彙力こそが教養である 』(角川新書)、『雑談力が上がる話し方』『雑談力が上がる大事典』(ダイヤモンド社)など多数ある。
撮影/佐久間ナオヒト

 あいさつするだけの関係と、あいさつ+αのちょっとした雑談を交わす関係とでは、互いに相手に対する感情や意識が大きく違います。

 あいさつだけなら「顔見知り、見たことがある人」どまりですが、そこに「+α」することで、相手にとっての自分の存在が「よく知っている人」「感じのいい人」へとランクアップするのです。
 長々と話し込む必要はありません。
「あいさつ+α」だけでいいのです。

 具体的な会話で比べてみましょう。

【単なるあいさつのみ】
あなた 「おはようございます」
相手 「あ、おはようございます」
→あいさつだけだと、ただの「顔見知り」レベル

【「+α」で雑談が広がる】
あなた 「おはようございます」
相手 「あ、おはようございます」

 ここから「+α」を入れる。

あなた 「今日も寒いですね」→ +α
相手 「しかも夕方から雨らしいですよ」→ さらなる+α
あなた 「ええ、だから一応折り畳み傘、持ってます」
相手 「さすが、用意がいいですね」→ 話が広がり、場が和む
あなた 「でしょ(笑)。じゃあ、また」
→「+α」で話が広がり、「感じのいい人」にランクアップ!

「この程度のひと言でいいの?」と驚いた人もいるかもしれません。
 この「ちょっとしたひと言」を、常に意識しているだけで、自分が想像している以上に、ラクに楽しく誰とでも会話ができるようになる。
 ぜひ、今日から実践してみていただければと思います。

 あいさつに「+α」するだけで、相手からも「さらなる+α」が戻ってくる。
 これがもっともシンプルで、もっともベーシックな雑談になります。

 相手との距離がほんの少し近づいた気がする。

 こんな感触をお互い手にできるのが、「+α」の効用なのです。

 次回はステップ3「別れる」についてお話したいと思います。
(次の更新は2月24日予定です)

※この記事は書籍『会話がはずむ雑談力』の一部を、編集部にて抜粋・再構成しています。