辞典や教科書の装丁こそ、
デザイナーにとっての醍醐味

 デザイナーにとって名誉だと思える仕事は、辞典や教科書なんです。ベストセラーを狙う本ではないですが、定番中の定番となる本です。『ビジネス統計学』のデザインを頼まれたときには、教科書的な位置づけの本ということで、気合いが入りました。よくよく聞いてみると、定価が5000円で中身も骨太で本格的。

 本文は2色刷り、スミ(黒)と茶色です。この本は翻訳書なんですが、原著も2色刷りでした。当初はカバーの色に合わせて、スミともう一色はカバーに使われる色を使う案を考えてみました。ところが試行錯誤していると、この茶色とスミの組み合わせがとてもきれいで、かつ定番書に相応しい落ち着きがあったので、これで決まっていきました。

 内容の構造もしっかりした本だったので、本文のデザインは細かく指定する必要があったのをよく覚えています。

編集者や著者の先に、読者がいる『ビジネス統計学』のために綿密に練られた本文の「文字組ルール」。細部まで厳密に配慮された仕事に、竹内氏のこだわりを感じる。(拡大画像表示