デザイナーは、著者と編集者に育ててもらう

 多くの編集者から信頼される竹内さんだが、著者から編集者を通して指名されることもあるという。そんな竹内さんだが、「自信がない」という言葉が多いのが意外である。

 先ほど、「自信が持てない」と言いましたが、デザイナーは編集者や著者によって育てれられているという一面があります。とても大きいです。

編集者や著者の先に、読者がいる田坂広志著『企画力』『営業力』を前に、感慨深げに語る竹内氏。「自信を持っていいんだと思えた、とても思い出深い作品」

『企画力』『営業力』という本のデザインを担当させてもらったときは、編集者と試行錯誤してラフデザインを一つにしぼって作り上げました。それを編集者が著者に見せにいったのです。その著者は、デザインに対する感性が高い人で、編集者もかなり緊張して著者の方に、ラフ案をお見せしたそうです。ラフ案を見た著者は、じっと見つめたあと「これは素晴らしいですね」と仰ったそうです。そして、「デザイナーはなんという方ですか」。

 編集者が僕の名前を告げると、「さすが竹内さんですね」と。

 この著者、田坂広志さんの著書は過去に何冊か担当させていただき、田坂さんからも指名していただいたことがありました。

 このとき、事前に僕の名前を出さずに編集者はラフ案を見せたそうですが、そこで一回で気に入ってもらえたことで、僕もデザイナーとして自信をもてるようになりました。とはいえ、まだまだですけどね(笑)。

 若い頃は、自分のデザインを変更させられると、内心むっとしていました。自分がデザインしたままやりたかった。でも、いまはむしろ編集者に合わせて作り上げようとしています。こちらも仕事をしてきて編集者という人たちの立ち位置もわかるようになってきました。

 そして本のデザインは、編集者や著者や書店員さんに気にいってもらえるようにと心がけるようになりました。これらの方々に気に入ってもらえれば、その先にいる読者の方々にもきっと満足してもらえると考えています。それでもまだまだ、僕も修行中なんですけどね(笑)。

 

 辞書や教科書を理想と言い、読者に届く装丁を、編集者と一緒になって求め続ける。竹内さんの手がけた作品が、ベストセラーから定番書にいたるまで幅広く存在する理由がストンと理解できました。次回は、デザイナー重原隆さんにお話を伺います。ご期待ください。

竹内雄二
ブックデザイナー。
1966年、愛知県生まれ。
名古屋芸術大学を卒業後、編集プロダクションを経て、工藤強勝氏に師事。その後28歳で独立。
書籍の装丁から本文頁の設計まで幅広くこなす。
一年間に手がける点数は、約80冊。
http://home.t02.itscom.net/takeuchi/