宅配業者にとって、需要に対応しきれないから契約を断るという姿勢は、一時的な業務負担の引き下げにはなる。しかし、需要は拡大しているのにそれに対応できるビジネスモデルを整備できないことは、収益機会の喪失でもある。長い目で考えると、そうした状況が続いた場合には成長のチャンスを逃すことにもなりかねない。

 ただ実際には、個々の企業が自助努力で人手不足に対応するには限界がある。新しい技術を既存のビジネスモデルに融合させるためには、まずはその技術の利用が認められなければならない。新しい技術の利用を認め、それに関するルールなどを取りまとめるのは政府の役割だ。

 今後、政府はドローンの活用や自動運転技術など、人手不足の緩和につながる技術の開発や特定の地域での試験的運用に注力することが求められる。人手不足で民間企業の経営圧迫が表面化した状況こそ、規制緩和を進めて新しい技術を導入し、社会全体を変革するチャンスだ。加えて、非正規、正規雇用間の賃金格差を解消するなど、働き手と企業の双方にとって好ましい労働市場を整備していくことも欠かせない。

 2016年の出生数は初めて100万人を下回った。すでに10年続けて出生数は死亡数を下回り、今後も人口は自然に減っていくと考えられる。この趨勢を短期間で食い止めるのは難しい。移民を受け入れるにも社会の抵抗感に加え、日本では受け入れ制度も十分ではない。

 そうした状況下で人手不足に対応していくためには、人工知能などを積極的に活用し、機械にできることは機械に任せてしまうくらいの発想の転換が必要になる。官民で新しい技術の活用などを進めることが、経済全体での生産性向上につながるだろう。

 逆に、それができないと、人手不足が企業経営を圧迫し、日本経済は徐々にジリ貧に向かう恐れがある。これからの人手不足がもっと深刻になることを考えると、早期に官民でこの問題に取り組むべきだ。

(信州大学教授 真壁昭夫)