1月のダボス会議で
習近平は世界のエリートを味方に

 世界中の政界・財界・学会の超エリートは毎年1月、スイスのダボスに集結する。「世界経済フォーラム」(通称ダボス会議)の年次総会に出席するためだ。

 今年の「ダボス会議」は、全体的に「暗い雰囲気」だった。理由は、「トランプが米国大統領になった」こと。彼は、「アメリカ第一主義」を掲げる「ナショナリスト」で、「保護貿易主義者」。これは、「グローバリズム」を支持する既存のエリートと「正反対」の考え方だ。

 習近平は、「ナショナリストのトランプが、世界中のエリートから嫌われている」ことを知っていた。そこで、彼は「世界のエリート」を味方につけることにした。習は1月17日、ダボス会議で以下のように演説した。

「世界が抱える諸問題の責任を、グローバル化に転嫁したり、保護主義の殻に閉じこもったりするべきではない」
「中国は今後も『門戸を開き』、新興国がグローバル化の恩恵を受けられるよう後押ししていく」

 彼は、「グローバリスト」である「世界のエリート」が聞きたいことを言ったのだ。

 ちなみに1年前、習近平は、「もっともエリートに嫌われる存在」だった。なぜなら、習は「中国の夢」を掲げる「ナショナリスト」だったからだ。それで、ジョージ・ソロスは2016年1月21日、同じダボスで、「(中国経済の)ハードランディングは、事実上不可避だ!」と断言し、中国を見捨てた

 ところが1年後、習近平は「ナショナリスト」をやめ、「俺はグローバリストだ!」と宣言した。この変節、「尖閣・沖縄問題」で中国を警戒する日本人は、「ふざけるな!そんな見え透いた演技には騙されないぞ!」と思うだろう。

 ところが驚くべきことに、エリート達の反応はとてもいいのだ。ソロスは、習近平演説の翌々日(1月19日)、ブルームバーグのインタビューで、中国の未来についてこう語っている。

<習近平国家主席は中国を社会的にもっと開かれた状態にすることも、もっと閉じられた状態にすることも可能だが、中国自体はより持続的な経済成長モデルに向かうだろう。>

 ほんの1年前の「ハードランディングは不可避」宣言は、どこに行ったのだろうか?「習近平は反省したから、救ってやろう」ということなのだろうか。

 キャリー・グレイシーは、「世界の舞台では、習主席は、自分がドナルド・トランプとは違うということを巧みに示した。ダボスでの世界経済フォーラムで、習主席がグローバル化と自由貿易を擁護したのは有名な話だ」と書き、習の演説がトランプの対中政策軟化に役立ったとの見方をしている。