日本人の死亡場所の80%近くは病院であるが、欧州諸国は50%前後。オランダは既に30%を下回った。在宅医療や在宅介護が浸透すれば死亡場所も、本人が望む「非病院」「在宅」になっていく。その引き金が、夕張市では総合病院の閉鎖にあった。

 病院が多いと地域の医療費は高くなる、というのは定説である。財政破綻した都市で、定説が裏付けられた。奨励してもなかなか浸透しない在宅医療だが、思い切った外科手術もひとつの策ではないだろうか。

自分で自分の最期の姿を選びたい

 昨年の1月5日に全国紙で女優の樹木希林さんが、ハムレットのオフィーリアに扮して森の中の池で横たわる姿が登場したことを覚えているだろうか。「死ぬときぐらい好きにさせてよ」という衝撃的な、大きなキャッチコピーが紙面に踊ったユニークな企業広告である。

 その文中で、本人が「死を疎むことなく、死を焦ることもなく。ひとつひとつの欲を手放して、身じまいをしていきたいと思うのです」と記している。また「生きるのも日常、死んでいくのも日常」とも話している。

 家族や医師によって病院で亡くならざるを得ない状況の日本。樹木希林さんは、その死に方へ「おかしい」と訴えた。自分で自分の最期の姿を選びたい、そんな思いが込められている。

 夕張市ではそうした状況に近付いているように見える。日本で近い将来、起きるであろう死生観の転換が始まっている。

 この4月には、診療所の指定管理事業者が替わる。札幌市で東苗穂病院などを運営する医療法人社団・豊生会が、やはり10年間にわたって運営に乗り出す。

 既に同会の医師など専門職が夕張市立診療所で活動しており、在宅医療重視の姿勢を引き継ぐと見られる。

 診療所自体も再生事業の一環として中心部に移転する。その費用25億円も認められた。再建計画が動き出して10年、新体制で次の10年を迎えることになる。

(福祉ジャーナリスト 浅川澄一)