サラリーマンが「同時にすべてを試す」を実現する方法

 特に「(3)スタートからある一定期間は成果が出ないか、マイナスになることを想定内とする」は、会社で働く人にとって非常に重要なポイントです。

 なぜなら、この想定をあらかじめ上司や周囲に伝えておかないと、「失敗」と見なされて途中でストップをかけられてしまうからです。

 孫社長は経営者なので、自分の判断で赤字にすることができましたが、組織に属する会社員は何事も上司の了解を得なくてはいけませんから、そこは注意が必要です。

 たとえば、あなたが新商品のキャンペーンを任されたとします。

 会社から与えられる予算には限りがありますが、その中でできるだけ多くのキャンペーンを試してみたいと考えました。

 そんなときは、上司にこんな提案をしてみたらどうでしょう。

「新商品のキャンペーンはA案、B案、C案の三つを試しますが、半年以内に最も効果の高い一つの案に絞ります。そのため、最初の半年で年間予算の7割を使いますが、その後はコストが抑えられるので、トータルでは予算内に収まります」

 こうして「前半はコストが極端にかかりますが、後半はこれだけ下がります」と説明しておけばいいのです。

 これはいわば、最初から失敗を織り込んだ提案です。

 もし前半のコスト増を提案に盛り込んでいなかったら、1ヵ月後には「どうしてこんなにコストがかかるんだ、君の提案は失敗じゃないか!」という上司からの叱責が飛んできたでしょう。

 しかし、「半年で7割の予算を使う」とあらかじめ明言していれば、それは失敗とは認識されません。

 つまり、「上司に失敗を失敗と思わせないこと」が可能になるわけです。

 上司の側も、「これは失敗ではないのだ」と思えば安心します。リスクに敏感な上司ほど、部下の側がリスクを最小化してあげる必要があるのです。

 こうして三つのコツを押さえれば、肩書きがない若手社員であっても、「できるだけ大きく試す」ことができます。