新年度が始まり、今年も多くの企業で入社式が行われた。

 はじめて社会に出た新卒社員は、新しい生活への期待とともに戸惑いも感じていることだろう。なかには、早々と「社会人になったのだから、民間の保険にも入ったほうがよいのでは?」と思っている人もいるのではないだろうか。

 たしかに、親に生活費や学費などの面倒を見てもらっていた学生時代とは異なり、社会人になると自分が働いて得たお金で暮らしていくことになる。病気やケガをして働けなくなったときのことを考えると、不安になる気持ちも分からないではない。

 雑誌やネットなどを見ていると、保険加入の必要性を訴える広告や記事に出くわすことが多く、なかには調査機関のデータを根拠として、「入院すると、こんなにお金がかかる」と消費者の不安を煽るものもある。

 だが、その根拠となるデータをよく見てみると、「本当に保険が必要なのか?」といった疑問が湧いてくるのだ。

1日あたりの自己負担費用に
含まれているものは?

 民間保険の加入を促す根拠のひとつとして、よく利用されるのが生命保険文化センターの『生活保障に関する調査』だ。3年ごとに出されているもので、2016年度版は全国の18~69歳の男女4000人強に調査している。

 その中に、「直近の入院時の自己負担費用」を調べたものがあり、2016年度は1日あたりの平均が1万9800円となっている。

 この数字をもとに計算すると、10日入院すれば約20万円、1ヵ月(30日)入院すれば約60万円がかかることになる。入社したばかりの新社会人でなくても、誰だって「入院するとお金がかかって大変」と思うだろう。

 だが、根拠となったデータの自己負担額には、「高額療養費制度を利用した人+利用しなかった人(適用外含む)」「治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品などを含む。高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額」といった但し書きがある。