4月13日発売のスポーツ雑誌『Number』は「スポーツ 嫌われる勇気」というタイトルの特集だという。『嫌われる勇気』といえばアドラー心理学を説き明かしたベストセラー。普段は野球やサッカーなどのスポーツごとに特集を組んでいる『Number』が、様々な競技のスポーツ選手や指導者を集めて見出した、彼らの「勇気」とは? 松井一晃編集長に、この特集の真意を尋ねた。
清原和博選手が『Number』と『嫌われる勇気』の出会いのきっかけ
――今回、『Number』が「スポーツ 嫌われる勇気」という特集を組むことが話題になっています。やはり最初にお聞きしたいのは、なぜスポーツ雑誌の『Number』が嫌われる勇気なのか? ということです。
松井一晃編集長(以下松井) 最初のきっかけまでさかのぼると、昨年8月の『Number』の甲子園特集、というか清原和博選手の記事ということになります。賛否両論ある企画でしたが、“1985年の清原和博”への思いを込めた記事でした。私が僭越ながらその号の編集後記に清原さんに宛てたつもりで記したメッセージをTwitterで拡散してくれたのが、『嫌われる勇気』の著者のひとりである古賀史健さんでした。
そのあたりの経緯はNumber webで古賀さんも記してくださっているのでそちらもご覧いただきたいですが、ともあれ、それで一度お会いしようということになりました。
――その出会いがこの企画にどうやってつながっていったのでしょう?
松井 恥ずかしながら、古賀さんにお会いするということで初めて『嫌われる勇気』を読みまして。アドラーの教えを知ってみると、すぐにいろいろなスポーツ選手や指導者の顔が思い浮かんだんですね。
私の場合は、「課題の分離」というテーマで松井秀喜さんを想起しました。他者の課題と自分の課題を切り分ける、というアドラーの思想の中でも重要な部分ですが、松井さんは高校時代から「自分にコントロールできることだけに集中する」という意味のことをずっと言っていました。それで、ああ、これは他にもいろいろなアスリートが無意識のうちに『嫌われる勇気』に書かれていることを実践しているのではないかと思ったんです。
そこで古賀さんともいずれ何かやりましょう、とお話しして、アイデアをずっと温めていました。
――それが今回結実したと。
松井 はい。毎号報じなくてはいけないスポーツも多いので、会議の俎上に上ったのは約半年後でした。こういうことで、とプランを募集したところ、やはり興味深いアイデアが次々出てきたんですね。たとえば、「嫌われる勇気」という言葉から皆が真っ先に連想したのがラグビー前日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズさんでした。
あるいは、本を実際に読んでいるアスリートもいました。ボクシング特集で村田諒太選手にインタビューをしたところ、「共同体感覚」といったアドラーの用語を盛んに引用されて、勉強されていることがわかった。これは聞いてみない手はないな、と。