「嫌われる勇気を持ってこそ、人生を自由に生きられる」と説く、アドラー心理学に改めて注目が集まっている。その火付け役となった書籍『嫌われる勇気』はベストセラーを記録。ヒットの理由として、嫌われることに萎縮し、本来の自分を出せずに悶々としている人が世の中に溢れていることが推察される。我々が人目を最も気にするビジネスの現場を見ると、周囲に嫌われていても尊敬される人、出世する人がいる一方、嫌われて自らの立場を危うくしている人もいる。この差はいったい何なのか。ビジネスパーソンへのアンケート調査を基に、職場で嫌われることのメリットとデメリットを考察しよう。(取材・文/フリーライター・宮崎智之、編集協力/プレスラボ)
みんな、人目を気にせずに生きたい
でも「嫌われる勇気」を持てない現実
あなたは自由な人生を送るために、嫌われる勇気を持つことができるか――。
書籍『嫌われる勇気~自己啓発の源流「アドラー」の教え』(岸見一郎、古賀史健著/ダイヤモンド社)が、話題となっている。同著は、オーストリア出身でフロイト、ユングと並ぶ心理学三大巨匠の1人、アルフレッド・アドラー(1870~1937年)の思想を、哲人と青年の対話形式でまとめたものだ。
「人間の悩みは全て対人関係の悩み」「嫌われる勇気を持ってこそ、人生を自由に生きられる」という旨を説くアドラーの教えは、多くの日本人に深く刺さった。同著は、昨年末の発行以来大きな話題となり、40万部を超えるベストセラーとなっている。
これほどまでに同著が受け容れられた背景には、嫌われることを恐れる人が世に溢れているという現実がうかがえる。誰もが人の目を気にせず自由に生きたいと思うものだが、実際には嫌われることに萎縮して、本来の自分を出せずに悶々としている人が大勢いる。
それも無理はない。世の中の景気は上向いてきたとはいえ、多くの日本企業を取り巻く事業環境は依然として厳しい。一時は「追い出し部屋」などという言葉が流行り、成果主義的評価制度の定着も相まって、多くのビジネスパーソンは「なるべく失敗をしないように」「上司や同僚に嫌われないように」と、周囲の顔色をうかがいながら仕事をしている。