2016年7~9月期までは、実質消費が順調に増えていた。これは、消費者物価が低下して実質賃金が上昇したためだ。しかし、10~12月期では、円安によってその状況が変わり、実質消費の伸びが鈍化している。

 この状況が続けば、実質賃金の下落と実質消費の減少という現象が再現する。

10~12月期は
実質消費伸び率が鈍化

 2月13日に公表されたGDP統計(1次速報)によると、2016年10~12月期の実質GDPの成長率(対前期比、季節調整済み)は、0.2%となった。この結果、16年の実質成長率は1.0%となり、15年の1.2%よりは低下した。

 図表1に見るように、実質民間最終消費支出の前年伸び率は、14年、15年と連続してマイナスだったが、16年にはプラス0.4%になった。伸び率の絶対値はそれほど大きくないものの、2年連続して落ち込んでいた実質消費が増加したことの意味は大きい。

 これは、1~3月期、4~6月期、7~9月期と連続して対前期比がプラスだったためだ。

 こうなったのは、消費者物価が下落し、実質賃金が上昇したからだ。

 16年は、年初から円高が進み、株価が下落した。11月のいわゆる「トランプ相場」までは、こうした状況が続き、経済があまり順調でないという印象を持つ人が多かった。

 しかし、実質GDPで見れば、7~9月期までは順調な成長が実現した年だったのだ。

 しかし、10~12月期には、この状況が変化している。

 後で見るように、11月からの円安と原油価格の持ち直しによって、輸入物価指数は上昇に転じており、それを反映して、消費者物価指数の対前年伸び率のマイナス幅が縮小しつつある。

 このために、10~12月期には名目民間最終消費支出は0.3%の伸び(対前期比、季節調整済み)であったにもかかわらず、実質ではマイナス0%になってしまった。