スプーン曲げで一世を風靡したユリ・ゲラー。8月初旬のサービス開始に合わせて来日し、プロモーション活動、被災地訪問などをする予定だ。
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 ユリ・ゲラーと聞いて、「ああ、あのスプーン曲げの……」とすぐに連想できるのは40代以上の人だろう。1970年代に『11PM』や『木曜スペシャル』など当時の人気番組に出演して、得意のスプーン曲げを披露。日本に一大超能力ブームを巻き起こす立役者となった。2006年には日産自動車のCMに登場し、健在ぶりを示したことを覚えている人もいるのではないか。

 その懐かしのユリ・ゲラーが帰ってくる。主戦場は、占いコンテンツ市場だ。モバイルやウェブ向けにコンテンツを展開するメディア工房(東証マザーズ上場)とタッグを組み、8月初旬から占いコンテンツを提供する。

 中身について、同社取締役の渡邊喜一郎氏は、「基本的にはユーザーの属性や状況に応じたユリ・ゲラーの占いや予言などを受信できるようにする。詳しい内容は言えないが、今の状態からプラスになる方法など、とにかくユーザーの心が高揚するもの。メニューは更新し続け、複雑なロジックを使ったプログラムにより、状況や時間帯に応じて、アクセスするたびに毎回違う内容が表示される。これで、震災後の日本をポジティブにしていきたい」と話す。

 それにしても、なぜ今ユリ・ゲラーなのか――。話は震災直後に遡る。渡邊氏が渡米した際、ラジオでたまたまユリ・ゲラーの人生相談の番組を聴いた。ユリ・ゲラーは、一般人が抱える家庭の問題などに耳を傾け、占いや予言を通じて、ポジティブなパワーを与えていた。

 そのパフォーマンスに感銘を受けた渡邊氏は、「震災後の日本で彼のコンテンツを提供すれば、大きな勇気付けになる」と考え、早速米国の友人を介して、本人と会う。話はとんとん拍子に進み、5月に業務提携契約をしたというわけだ。

 ユリ・ゲラーは、実は米国や欧州で今もエンターテイナーとして活躍しているそうだ。スウェーデンでは視聴率30%を稼ぐ番組も持ち、「引っ張りだこ状態」と渡邊氏は言う。

 「日本でも10人に聞けば8、9人は知っている抜群の知名度がある。年配層だけでなく、若年層にも浸透している。このコンテンツは今後間違いなく当社の主軸になる」

 若年層への浸透は意外だが、ポケモンに、ユリ・ゲラーがモチーフではないかと問題になった「ユンゲラー」というキャラクターがいることも、多少影響しているのかもしれない。

 コンテンツは、ケータイ、スマホ、PCで提供する。料金は、たとえばケータイ向けでは月額315円の定額制を予定している。モバイル向け占いコンテンツでは、細木数子のコンテンツが一時会員100万人を集め、今でも25~26万人が継続して有料登録していると言われている。渡邊氏は、「無料のお試しコンテンツも提供し、有料へと誘導していく。100万人は無理だろうが、当面は10万人の有料会員を目指したい」と話す。

 モバイル占いコンテンツ市場は拡大基調だったが、2009年に対前年比4%減の191億円と縮小するなど成熟市場となりつつある。しかし、同社は同年にシェアを7%に伸ばし、2010年8月期の連結売上高は前年比11.9%増の21億3500万円と、業績が非常に好調だ。先日発表された2011年上半期の売上高も、前年比20.4%増の12億1200万円と加速している。2010年11月には、監査法人トーマツが成長率の高い企業として「デロイト日本テクノロジーFast50」の1社に選出した。同社は「年間20%以上の成長を目標にする」と非常に強気だ。

「1兆円」と言われる占い市場全体で、モバイル系は2%程度を占めるに過ぎない。ケータイ・ユーザーが1億人を突破している現状を見れば、コンテンツ次第でまだまだ伸びる余地もあるだろう。幅広い年齢層に認知が高いユリ・ゲラーのコンテンツは、シェアを奪うだけでなく、占いコンテンツとは無縁だった新たなユーザー層の開拓にも、一役買うことになるかもしれない。

(大来 俊/5時から作家塾(R)