最近、よく耳にする「パラレルキャリア」。収入補填という意味合いの強い「副業」とは違い、自分の持つスキルを人に教えたり、社会貢献や人脈を広げるといった目的に活用する働き方だ。
神戸市も職員の副業を解禁!
注目される「パラレルキャリア」とは
この4月、あるニュースが話題になった。神戸市が職員の副業を解禁すると発表したのだ。地方自治体が公務員の副業を推奨するのは、これまでに例がない。神戸市に先駆けて、ロート製薬やYahoo!などの民間企業も次々と副業を解禁しており、ダブルワーク推奨の動きが、いま加速していると言っていい。
終身雇用が崩壊し、世界的な有名企業が次々と失速する時代、大企業の社員や公務員であっても、一生安泰とは言えない状況になっている。
そんな中で最近、耳にするのが「パラレルキャリア」という言葉だ。パラレル(parallel)とは、「並列」を意味する言葉だが、1つの仕事だけをやるのではなく、複数のキャリアを同時に積み重ねていく働き方のことである。
「副業」とどう違うのか? 疑問を持たれる方もいるだろう。副業は、主に報酬を得るためのサイドビジネス。対してパラレルキャリアは、報酬だけが目的ではない。自分のスキルを人に教えたり、ボランティア活動や社会貢献を行ったり、人脈を広げたりと、付加価値を重視している。自分自身も成長でき、複数の仕事に相乗効果をもたらす。そういった広い意味を持つ働き方のことだ。
実際にパラレルキャリアを実践している人を取材した。
田畑智恵さん、29歳。パステルシャインアートという絵画教室を1年半前から開いている。パステルで描く可愛らしい絵画で、アートセラピーの一種である。ふだんは公認会計士として会計事務所に勤務している田畑さんだが、激務が続き、入社1年目で体調を崩してしまう。そのときに出会ったのが、このアートセラピーだった。
「絵を描くことで自分を取り戻すことができました。それで、アートの力を多くの人に伝えたい、人を救いたいという気持ちが湧いてきたんです」(田畑さん)
田畑さんは、それまで正社員として勤務していたが、絵画を教えるようになり、一旦は退職を考えた。転職活動も行っていたが、会社の助言もあり、非常勤へと転向。ゆるやかに働ける部署に異動をした。今も会計士と絵画講師という「2本の柱」で働いている。