ドラッカーも提唱していた
パラレルキャリア

「非常勤になることで、アートを通じて知り合った方から会計のお仕事の依頼をいただくことも増えてきました。正社員を辞めると自分の居場所を失うのではないかと怖かったのですが、居場所は減るどころか、これまで以上に増えていっています」(田畑さん)

 彼女が講座を開くのに活用したのが、ストアカというサービスである。ストアカは、何かを学びたい人のためのサイトで、現在170ジャンル、1万2000の講座が掲載されている。マーケティングやプレゼンといったビジネス系から、WEBやIT関連、語学、写真、映像、アート、ハンドメイド、ものづくり、料理、美容、スポーツ、子育てなど幅広いジャンルをカバーしている。

 講師の数は9000人、ユーザーは12万人を数える。専業の講師もいるが、田畑さんのように、パラレルキャリアの1つとして、就業時間外に教えているケースが多い。

 例えば、IT企業に勤務しながら、週末だけエクセルやパワーポイントを使った資料作成を教える男性。また、写真の技術を教えるのではなく、女性向けに“美しく撮られるため”の教室を開催するカメラマンもいる。

 シニア層も活躍している。飲食関連の会社に勤務し、定年退職した男性は、在職中に身につけた技術を活かし、自宅で包丁研ぎの講座を開いている。主婦を中心に、女性に大人気だという。

 ストアカでは、受講者が感想や評価を投稿することで、人気講師の検索順位が上がっていく仕組みを採っている。

「学びの業界は、これまで“見える化”ができていなかったんです。ストアカが目指しているのは、学びの“食べログ”です。講師の力量や指導内容、人柄などで評価をできるシステムがあれば、それを見てユーザーは判断できるわけです。実際、人気の高い講師には書籍の執筆依頼が来ており、すでに何冊も本を出版している人もいるほどです。受講生からの推薦で出版社から声がかかったケースも少なくありません」(ストリートアカデミー株式会社 代表 藤本崇さん)

 前述の資料作成講座の講師は、ていねいな指導で人気が上昇し、今や月商100万円レベルに達しているそうだ。

 自分の特技や趣味を教えるのは、パラレルキャリアの第一歩として始めやすい。ストアカは、講師も募集しているので、興味のある方はコンタクトをとってはいかがだろうか。

 この機会に2枚目の名刺を持ってみよう、と考えている方には、他にもこんなサービスがある。社会貢献、ボランティア活動を通じて、自分の人生を作っていく「パラレルキャリア支援サイトもんじゅ」。その名も「NPO法人2枚目の名刺」では、会社員がNPO活動などを始める橋渡しを行っている。将来、独立を考えている技術者には、「TEAMGUILD(チームギルド)」というサイトもおすすめだ。

 パラレルキャリアという言葉自体は、決して新しいものではない。経営学者のピーター・F・ドラッカーが1999年に、著書『明日を支配するもの』の中で、すでに提唱している働き方である。

 ネットやSNSの普及で、ドラッカーの予言が、まさに現実のものになっている昨今。シングルキャリアに不安を覚える方は、身近なところから、何らかのパラレルキャリアを始めてみるのも悪くない。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R))