プレミアムフライデー導入に備えて、社内向けイベントの企画にいそしんでいる企業がある。社員のプライベートにまでもなぜ干渉してしまうのか?そこには「指示待ち社員」という大きな問題が隠されている

プレミアムフライデーで、金曜日の15時以降に、社内イベントを企画し社員を参加させる取り組みに、私は耳を疑った。30年変わらぬその発想に、社員の消費行動を阻害するだけではない、社員の自律性を損ない続けてきたトンデモ人事部の元凶を見た。(リブ・コンサルティング人事部長兼組織開発コンサルティング事業部長 山口 博)

社員の個人生活に
干渉せずにいられない会社

 今年2月から導入されたプレミアムフライデー。経済産業省流通政策課が旗振り役になり、経団連をはじめとする各経済団体が名を連ねるプレミアムフライデー推進協議会が設立され、生活スタイルの変革、地域コミュニティの一体感醸成、デフレ的傾向からの克服を目指していくという。いわゆる個人消費拡大運動だ。

 百貨店のイベント、飲食店の割引、ホテルの宿泊プラン、スーパーやコンビニの企画商品、旅行会社のツアー、鉄道の割引、遊園地の入園パス、ネット通販の特典など、協賛企業が目白押しだ。画期的なアイデアで、消費を劇的に拡大するヒット企画が打ち出されることが期待される。

 私には、こうした企画のヒット度合いが、プレミアムフライデーの成否を左右するように思えてならない。降って湧いた、給与日後だろう月末金曜の午後の自由な時間を使ってみたいと思わせる、ビジネスパーソンを誘引するアイデアだ。

 そのような中で、耳を疑う取り組みに直面した。就職人気企業トップになったこともある、わが国を代表する某企業が、プレミアムフライデー導入に呼応して、社員向けの社内イベントの実施を打ち出したのだ。

 社員のために、金曜日の15時以降、趣味の会、スポーツサークル、勉強会、読書会、社内ネットワーク会合、社内情報交換会などの会合を会社主導で企画して実施するというのだ。

 顧客向けのイベントも実施すれば、社内向けの社員への対応も行う…読者の中には、ごく自然な取り組みだろう、何が悪いのか、と思う人もいるに違いない。しかし、私は、とても大きな危惧を持っている。15時退社ということは、15時からは会社の制約から離れて、自由なプライベートの時間を過ごしてくださいということだ。にもかかわらず、これでは社員に、業務からは解放したが会社にいてくださいというメッセージを送っているようなものだ。それでは消費は拡大できない。

 会社が社員の個人生活に、なぜ、そこまで干渉しなければならないのか。生活スタイルの変革、地域コミュニティの一体感醸成、デフレ的傾向からの克服に貢献しないどころか、逆行していると言わざるをえない。