救命救急医療において「世界一の都市」と言われるのが米国のシアトルだが、救命率でシアトルをはるかに凌駕するのが大阪の豊中市だ。実は、その世界最高水準の救命率を支えるのが、千里救命救急センター(大阪府吹田市)の活躍である。その活動と実力に迫った。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

東京都は「全国ワースト1」
病院搬入まで30分以上の現実

 昨年5月の朝早く、神奈川県川崎市在住のKさん(50代・女性)は耐え難いめまいで目が覚めた。

 天井がぐるぐると回転して見え、目を開けていられない。足首を持って振り回されているような遠心力さえ感じる。

 強烈な乗り物酔いのような状態になり、たまらず嘔吐した。

 (これはただごとじゃない)

 恐怖心にかられた彼女は横で寝ている夫に声をかけ、救急車を呼んでもらった。 救急車は5分ぐらいでやってきた。ストレッチャーに載せられ、救急車のなかに運ばれた時点でKさんは、

 (助かった、これでもう大丈夫)

 と思ったらしい。

 ところが、そうはいかなかった。

「脳血管に関係のあるめまいかもしれませんから、脳血管外科のある病院に搬送しますね」