早朝に突然襲っためまい
吐き気と動悸も1時間以上続いた
足首をもたれて、ぶんぶん振りまわれているような遠心力を感じた。
驚いて目を覚ますと、天井がぐるぐると回っており、目を開けていられない。めまいだった。
(宇宙飛行士の訓練はこんな感じかもしれない)
ちらっと見た枕元の時計の針は、5時10分を指していたと思う。
それからおよそ1時間。妙子さん(49歳・仮名)は、ひたすら耐え続けた。
当初はすぐに収まるものと期待していたが、甘かった。冷や汗が、頭から水をかぶったように全身を濡らしている。吐き気がこみあげてくるが、横を向くこともできない。
高校生の娘は今日、進級のための重大なテストがある。心配させたくない。
(だからあと少し。あの子が出かけて、それでもめまいがおさまらなかったら救急車を呼んでもらおう)
妙子さんのピンチにも気づかず、隣でいびきをかいて寝入っている夫・正臣さん(57歳・仮名)を頼るしかないのが心細い。
「行ってきまぁ~す」
早起きし、1人で朝食を済ませた娘が出て行くとすぐ、正臣さんに声をかけた。
「めまいが酷いの、動悸と吐き気もする。もう1時間以上続いているの。救急車を呼んで」
救急車が到着するまでの間に、保険証、財布、スマホ、スニーカーをバッグに詰めてくれるよう正臣さんに頼み、妙子さんは脳溢血等にも対応できる脳神経外科のある総合病院に搬送された。
「病院まで同行されますか」
妙子さんをタンカに載せて玄関を出る際、救急隊員は正臣さんに尋ねた。