「うつ病」と聞いて、自分とは無関係な病気だと思う方が多いかもしれません。実際には、日本におけるうつ病の生涯有病率(これまでに病気にかかったことがある割合)は6.7%(※1)で、15人に1人が生涯に1度は発症する可能性のある身近な病気です。うつ病と診断された人の59.8%が「自分が発症すると思わなかった」と回答しています(※2)。「頑張れば治せる」「抗うつ薬を飲むと依存症になる」など誤解の多いうつ病について、一般社団法人日本うつ病センター(JDC)六番町メンタルクリニック(東京都千代田区)所長の野村総一郎先生に聞きました。
「うつ病」と「うつ気分」の違い
「親が亡くなった」「仕事で失敗した」「失恋した」などの出来事により、気分が落ち込んでやる気が出ないといった経験は誰にでもあるでしょう。ただ多くの場合、そのストレスの原因となる問題が解決すれば気持ちは改善します。このような「うつ気分(抑うつ)」と「うつ病」は、大きく3つの点で異なります。うつ病の場合、必ずしも直接的な原因となるストレスがなかったり、「日本経済が悪いのは全て自分のせいだ」など事実にそぐわない妄想的ともいえる考え方をしたりします。抑うつが2週間以上続くのも特徴です。
うつ病の症状は多岐に渡ります。気分が沈み、重く苦しい抑うつ気分が1日中、ほぼ毎日続き、食欲もない。あらゆることへの関心や興味がなくなり、楽しいことがあっても気分は晴れません。意欲や思考力、集中力も低下します。疲れやすいなど、心だけでなく体に症状が現れることもあり、約9割のうつ病患者さんが不眠を訴えます。極端に悲観的な考えばかりが浮かび、「つらいし休みたいけれど、会社に迷惑が掛かるから頑張ろう。でも頑張れない。自分はダメな人間だ。つらいし休みたい……」というように「ぐるぐる」と暗い考えが頭の中を巡り、そこから逃れる手段として自殺を思いつくこともあります。重症になると、つらいという感情さえ湧きません。
男女とも最も患者数が多い40代
うつ病の患者さんは、女性が男性の1.67倍で、年代別では男女共に40代が最も多くなっています。また、うつ病を患う人の3分の1が、自分がうつ病だと思わずに受診していないという報告があります。
うつ病は自覚しにくい病気です。自分の症状が抑うつかうつ病かを判断する目安として、世界的に最も使用されているアメリカ精神医学会(APA)がうつ病の診断基準を定めたマニュアル「DSM-5」でチェックしてみましょう。目安としてチェックシートの○が多いほど、程度が重いと考えてください。