組織開発・人材育成に関する全国意識調査を行ったところ、わが国企業の人事部が期待されていないどころか、適切でないとまで思われているトンデモな状況が浮かび上がってきた。働き方改革の担い手になることはおろか、人事部の存在そのものの是非が議論されるレベルと言わざるを得ない。(山口 博)
働き方改革で人事課題が
史上最もハイライトされている
国を挙げての働き方改革の取り組みは、同実現会議の決定を経て、自社における実行の段階に入りつつある。働き方改革推進チームや推進担当が人事部内に設置・配置され、働き方改革自社展開プランのセミナーがあちこちで開催されたりしている。働き方改革を推進するためのサービスやソリューションも提供され始めている。
人事に関連する課題が、これほどまでに重要な経営課題としてハイライトされ、それも国を挙げての取り組みとして位置づけられたことがあっただろうか。私自身の30年間の人事領域での経験をふまえても、それ以前の経営史を振り返っても、史上初めてのことではないかと感じる。
いわば人事部への期待が、近年最も高まっているべき未曾有のタイミングである。しかし、わが国の経営者やビジネスパーソンは、人事部に期待するどころか、逆に適切でないと捉えているというトンデモな事態にあることがわかった。このほど実施した、「組織開発・人材開発に関する全国意識調査」の結果が、期せずしてそれを如実に示しているのである。
調査は、全国各業界、各規模、各職位の経営者やビジネスパーソン519人に対して行った。まずは、経営課題の対応状況であるが、現在、最も重視していることとして、34.9%が「経営戦略の実行」を挙げているが、それができているという回答は19.7%に過ぎない。
経営戦略実行を(1)環境変化(2)戦略策定・実行(3)組織体制整備(4)人材育成――の4段階に分けて聞いてみると、(1)はできているが、(2)~(4)はできていないという、組織体制整備に手をこまねいている上場企業は20.7%あった。また、(1)と(2)はできているが、(3)と(4)ができていないという、人材育成にネックがある企業は最多の24.8%にのぼった。
この4段階のうち、(3)組織体制整備、(4)人材育成、の2段階は人事部の領域である。つまり、人事部の役割に対する期待が明白になっているわけであるが、問題は、その組織人事対応への信頼度である。