働き方改革実行計画は、自社における展開を実現してこそ意味を持つ。しかし、わが国企業には、計画の実行を阻む断層がある。その断層を解消しない限り、働き方改革の実現も、自社の戦略の実現もかなわない。(リブ・コンサルティング人事部長兼組織開発コンサルティング事業部長 山口 博)
実行計画だけでは絵に描いた餅
実現を阻む組織の問題とは?
働き方改革による生産性向上の気運が高まっている。同一労働同一賃金、処遇改善、長時間労働是正、柔軟な働き方の実現など、12項目にわたる働き方改革実行計画が、働き方改革実現会議で決定された。
同一労働同一賃金ガイドラインが示されたタイミングで、その議論の問題性を取り上げたが(「同一労働同一賃金の議論に足りない『労働結果の評価法』の視点」)、今回決定された実行計画全体を組織開発コンサルタントである私の視点から見ると、これは、車の車輪の一方に過ぎない。もう一方の車輪、それも駆動輪が必要なのだ。
駆動輪とは、働き方改革実行計画を実行に移す、自社組織における取り組みである。同一労働同一賃金も、長時間労働是正も、自社組織において実現されてこそ、初めて意味をなす。そうでなければ、絵に描いた餅で終わる。自社展開プランの策定とその実現が不可欠なのだ。
働き方改革実行計画に限らず、ビジネスに関わる計画の実現度を高めるために、私が最も重視している点は、組織における断層を解消することである。決定された方針や計画が実行に移される段階で、どこかの階層やプロセスで止まってしまいそうな箇所があれば、その障害を取り除いておかなければならない。
政府の方針は、業界団体へ、業界団体から企業へと伝達される。企業内では、社長から役員、本部長、部長、課長へと伝達されて、実行に移される。そのどこかに、断層があって、意識的か否かによらず、伝達が滞ってしまったり、実行の確度が下がってしまったりすることが問題なのだ。
そして、その断層は、私の肌感覚では、今日のビジネスシーンにおいて多発しているように思えてならない。経営者と労働組合、管理職と非管理職、シニアと若者、男性と女性、本社と現場、管理部門と営業部門、新卒入社組と中途入社組、学卒者と非学卒者…と枚挙に暇がない。