コンピューター、サーバーなどの法人向けハードウェア市場が大きな変革期を迎えている。これまでのように自社でデータセンターを構築するモデルから、クラウドを利用してリソースを必要に応じて購入するモデルが人気を集めていることが主な要因だ。PCからサーバーへとエンタープライズ領域に拡大してきたDellはここで、ストレージ大手EMCを買収するという決断を下す。EMCを飲み込んだDell創業者のMichael Dell氏が5月、米ラスベガスで開催された新生Dell EMCのイベント「Dell EMC World」にて、アジア太平洋地区の記者の質問に応じた。
1社から企業ITのすべてを調達したい
顧客のニーズに応える
DellがEMCを670億ドルで買収すると発表したのは2015年秋のことだ。買収は2016年9月に完了、社名は新たに「Dell Technologies」として発足した。
Dell Technologiesの下、EMCは「Dell EMC」に、DellのPC事業は「Dell」となり、VMware、Pivotal、Virtustream、RSA SecurityとEMCが“フェデレーション”として抱えてきた子会社、それにDellのセキュリティ事業SecureWorksが入り、7事業を擁する巨大ベンダーが誕生した。
EMC買収と同時期にライバルHewlett-PackardはPCとエンタープライズ事業を分割して、それぞれHPとHewlett Packard Enterprise(HPE)としてスタートしている。HPEはその後も、サービス事業、ソフトウェア事業などを売却しており、お互い対極の方向に向かっている。
Dell氏はHPEについて聞かれると、「我々は成長すること、シェアを拡大することにフォーカスしている。確かに(EMC買収という)大胆な選択をした。現在、我々はさまざまな分野でナンバー1だ。顧客、パートナーからの反応はとてもよい」と自信を見せる。IT調査会社であるGartnerの「Magic Quadrant」では、15分野で「リーダー」の座についている。サーバーについては、HPEが首位ではあるが成長率は12%のマイナス、2位のDell Technologiesは0.1%で微増し、差を縮めている(IDCの2017年第1四半期より)。
EMCとDell、大企業同士の合併となったが、これについてDell氏は「製品分野の重複がほとんどなく補完的な買収だったため、うまく行った」と満足顔だ。顧客の好反応の理由として、「1社から全てを調達したいと思っている」と分析する。「世界のミッションクリティカルなデータの半分は、Dell EMCシステムの上にある。我々は保護や可用性という点で、重要な責任を担っており、真剣に受け止めている。顧客からの信頼を得ることを重視しており、買収完了から8ヵ月で大きな成果を遂げてきたと自負している」とDell氏は続ける。
Dell Technologiesは180ヵ国に展開し、社員数は約14万7000人。売上高は年740億ドルと報告している。