クラウド型会計ソフトで
レジや銀行口座の情報を自動取得・自動仕訳
私があえて「クラウド化」と言い換えたのには理由があります。それは会計のIT化には従来からある「パッケージ型」と、近年脚光を浴びている「クラウド型」があるからです。
パッケージ型の会計システムには、「弥生会計」「勘定奉行」「PCA」「JDL IBEX」などがあります。これらのソフトを使えば、パソコン上で会計処理を行なうこと、つまりIT化が実現します。
ところが、パッケージ型の会計システムは、飲食店のほかの業務システム(POSレジ、決済、仕入など)や銀行口座と接続しているわけではないので、会計処理を行なうには必要なデータをほかのシステムや書類から引き出してきて、会計システムに入力する「手作業」が必要です。手作業をすれば、時間も手間もかかりますし、入力ミスが起こる可能性もあります。つまり、パッケージ型では、上で挙げたような負担や課題を根本的に解決できないのです。
しかし、クラウド型の会計ソフトを導入すれば、店側、税理士側ともに会計業務に関する作業負担を劇的に軽減することが可能です。
以下にクラウド型会計ソフトの主な利点を整理してみました。
1.連携システムからの情報は自動取得。手入力が不要に
クラウド型の会計ソフトは、POSレジ、仕入、Eコマース、決済などのクラウドサービス、金融機関、クレジットカード会社と連携して、売上データや取引明細などの情報を自動的に取ってきてくれます。その結果、手入力がほぼ不要になります。
2.リアルタイムで会計データの把握ができる
手間のかかる仕訳も簡単になります。システムが仕訳のルールを学習してくれますので、使えば使うほどソフトが正確に自動仕訳してくれるようになっていきます。そして各種レポートや会計帳簿も自動的に作成してくれるので、面倒な仕訳の手間が省け、リアルタイムで経営状態の把握ができます。
3.税理士と常に情報共有。面倒な書類のやりとりがなくなる
会計データはクラウド上で閲覧できるため、税理士と同じ情報を常に共有した状態に。会計処理のために書類を送ったりする手間もなくなります。
4.インターネットが通じていれば、どこでもチェック可能
ブラウザで見ることができるので、インターネットさえつながっていれば、ノートパソコン、タブレットPC、スマートフォンなどデバイスを選ばず、どこでも会計データをチェックできます。
5.システムのアップデートもオンラインで
新税制への対応や新機能の追加などは、パッケージ型ではソフトを入れ替えなければできませんでしたが、クラウド型はオンラインで自動アップデートされているので、常に最新のシステムを使用できます。
クラウド型のデメリットをあえて挙げるとすれば、「インターネット環境がないところでは使用できないこと」くらいでしょうか。システムがインストールされたパソコン以外では会計処理やデータの確認ができないパッケージ型に比べれば、クラウド型の利用環境は圧倒的に優れているといえるでしょう。
会計のクラウド化の最大の効果は、個々の業務システムによって見える化されたデータや銀行の取引実績などをシステム上で自動的につなげて、より高度な経営判断を行なうための材料にすることです。
たとえば、レジや仕入をIT化することで売上と原価の正確な数字がわかったとしても、それ以外のコストも合算して最終的にどのくらいの利益が出ているかを把握したいと思ったら、パソコンなどを使って膨大な集計作業をしなければなりません。さらに、クレジットカード決済や掛け売り(ツケ)などがあると計算は煩雑になり、正確な数字を出すのが困難になります。クラウド型の会計ソフトを使えば、そんな面倒な計算作業を自動かつリアルタイムで行なってくれます。
飲食店を経営するのに必要な数字は「売上」と「原価」だけではなく、「人件費」「地代家賃」「客用消耗品」「販促費」「水道光熱費」「減価償却費」などがあります。それらすべてを結びつけてこそ、はじめてその店全体の数字、つまり経営状態が正確に見えてきます。クラウド化された会計システムはそれをリアルタイムに、わかりやすく、そして手間なく実現してくれます。正確なデータを踏まえた、高度な経営判断が可能になるのです。