未来のキャッシュフローも
試算できる「MFクラウド会計」

 クラウド型の会計ソフトには、「MFクラウド会計」「freee(フリー)」「Crew(クルー)」などのクラウド専門の会計サービスのほか、「弥生会計オンライン」などパッケージ型会計ソフトのクラウド版もあります。
 ここでご紹介するのは、マネーフォワードが提供する「MFクラウド会計」です。

PC、スマホ、タブレットで使用できるMFクラウド会計


 同サービスを薦める理由は、「技術の開発」と「事業の開発」という2つの面において、クラウド型会計ソフトの中で突出しているからです。

 技術面でいえば、同社代表の辻庸介氏がもともと大企業の経理部で働いていた経験があるためでしょう、会計処理の実態に即したシステムデザインがなされていて、とても使いやすくなっています。また開発スピードが速く、次々に新しい機能が追加され、ユーザーからの要望にもすぐに対応してくれる点も「MFクラウド会計」の特徴です。

 事業面から見ると、金融機関、クレジットカード会社、POSレジなど、数多くの企業との連携を積極的に進めていることが、同サービスの強みになっています。たとえば、銀行の連携先は約3400口座にも上り、全国の銀行をほぼ網羅しています(2017年5月現在)。

 先ほど「飲食店経営にはキャッシュフローの把握が重要」という話をしましたが、「MFクラウド会計」では、各業務システムや銀行口座から明細データを自動取得したのちに自動仕訳を行い、次のようなキャッシュフローレポートが自動作成されます。

キャッシュフローレポート


 このグラフで見れば、数字に強くない人でも月ごとの収支および現金残高の推移が一目瞭然です。気になる月があれば、さらに詳細なデータを見ることもできますし、週次や日次の数字を確認することもできます。

 また、このキャッシュフローレポートでは、買掛の支払いや税金関係の支払いなど大きな支出予定をあらかじめ入力しておくことで、未来のキャッシュフローを試算して表示してくれます。

 私が飲食店を経営していたころ、経営者の中には「数字はあてにならない」「数字を見てもそこに真実はない」と断言している人が何人もいました。

 その言葉は、一面では事実だと思います。なぜなら、そんな数字否定論を語る人にかぎって、売上や仕入、諸経費の管理をちゃんとしておらず、どんぶり経営をしていたからです。彼らが見ていた数字は、鮮度が古かったり、不正確だったりして、そもそもあてにできるものではなかったし、そんな数字を頼りにしてもいいお店作りなんてできるはずがなかったのです。

 しかし、クラウド型の会計ソフトを利用して数字の鮮度がよくなり、正確性が向上すれば、話は別です。出てきた数字には、お店の経営状態を表すたしかな真実があります。

 クラウド型会計ソフトによって日々最新の数字をチェックしながら、課題の発見や改善策の検討をスピーディに行ない、PDCAサイクルを回していくことで、これまでできなかったような高度な経営判断を下すことが可能になります。

 飲食店経営は、船の舵とりと似ています。船はその時々の潮の流れや風の影響を受けやすく、目的地に向かって進んでいるつもりでも、航路から外れてしまうことがあります。そんなとき、位置情報を確認して、船を進ませながらちょっとずつ舵を調整していけば、だいたいまっすぐに走っていくことができます。しかし、外れたことに気づかないまま進み続けてしまうと、大きく航路から逸れてしまい、気づいたときに元に戻るためにはものすごい時間と労力がかかってしまう……。

 この「ちょっとずつ舵を調整する」ことこそ、飲食店経営においても重要なのです。
 飲食店は日々営業する中でお金の出し入れが頻繁に発生します。どんぶり経営をしていると、気づかないうちに資金繰りが悪化して経営が行き詰まる、なんてことも十分に起こりえます。

 だからこそ、日ごとまたは週ごとに最新の数字を見ながら、ときにはアクセルを、ときにはブレーキを踏んで、きめ細やかな意思決定を行なっていく。そうすることで堅実な経営が実現できるのみならず、料理やサービスの質が向上して、自分の店を繁盛店に育てていくことができるのです。

 クラウド型会計ソフトは、飲食業界にかぎらず、あらゆる業種の会社で使われていますが、経営に与えるインパクトの大きさで言えば、飲食店がダントツなのではないかと私は思っています。

 今回お話をうかがったKAGAYA&Melissaグループの前田瑞樹さんも、クラウド型会計ソフトを導入することで「会計処理の負担が劇的に減った」と、そのインパクトを肌身で実感しているお一人です。次回はその効果を詳細にお聞きしましょう。
後篇に続く)