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自動車部品業界の経営改善を支援するために設立されたファンドが、電力需要の低減という副産物を生むかもしれない。
日本政策投資銀行と日本自動車部品工業会が、「サプライチェーン・サポート投資事業有限責任組合」というファンドを立ち上げた。その目的は「自動車部品メーカーの震災からの立ち直りを支援すること」(西山健介・日本政策投資銀行企業金融第一部課長)。
このファンドは高い利回りを狙っていない。そのため、投融資の利率も通常のファンドの2分の1以下に設定し、目標規模は500億円にも上る。そのほとんどを日本政策投資銀行が用立てる。
投融資の条件は大盤振る舞いともいえるほど、柔軟だ。
基本的には部品工業会の会員411社の紹介、推薦があれば投融資が可能となる。つまり、おカネは日本政策投資銀行が出して、目利きは部品工業会会員が担うのだ。
「これがなければ自動車が作れないという部品を作っている会社には投融資していきたい。これまでの日本政策投資銀行のファンドではできないようなところまで踏み込んでやっていきたい」(本野雅彦・日本政策投資銀行企業ファイナンスグループ課長)という。
被災しているかは条件に入っておらず、外資系企業の日本の生産拠点でも構わない。数千万円規模の投融資も対象になる。
さらに、中小企業向けの緊急保証制度を利用した融資をすでに受け、これ以上活用できない企業でも、必要不可欠な部品を作っている会社なら、このファンドを「活用してほしい」(本野課長)という。
このサポートファンドは対象が広いだけではない。隠れた目的がある。電力供給のリスク低減だ。
東日本大震災以降、完成車メーカーは、部品供給に関するリスクを分散させることに躍起になっている。今後、部品メーカーに対して、拠点の分散化や電力の安定的な確保などを求めていく。
サポートファンドでは生産を海外移転するような場合を除き、用途にいっさいの制限がない。そこで、「今回のファンドの投融資を自家発電機の購入に充ててもらえればと考えている」(部品工業会関係者)というのである。
規模や、緊急用か常時稼働かで価格は異なるが、「自家発電機は一つの工場に対して数千万円から1億円ほどあれば設置できる」(部品工業会関係者)。
ある大手部品メーカーは今回のファンドは活用していないものの震災以降、「すでに2基の自家発電機を発注した」という。電力のリスク低減の動きは確実に自動車部品業界に広がっている。
自家発電機購入資金にも利用できることが朗報であるのは間違いない。このファンドは自動車業界の節電の動きにひと役買いそうである。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)