大手メーカーがワンペダルに
踏み切れないのはなぜか

「これまで自動車業界では、踏み間違い事故は気をつければ防止できるという認識でした。それに、もし仮にナルセペダルが普及した場合、運転者が操作になれた後、従来車を運転した際に操作方法の違いから事故が起きるかもしれないし、従来のペダルが古式の欠陥品のような扱いになってしまうかもしれない。そうなると、市場の動きも変わってくるので、大手メーカーにしてみれば本腰を入れてワンペダル事業に乗り出せないという面もあるのでしょう」(松永氏)

 また、消費者心理としても、ナルセペダルの操作に慣れることができるのかという不安もあるのだろう。特に高齢者の場合、これまで何十年と続けてきた習慣とは違う新しい動作が必要となるため、慣れるまでに時間がかかるかもしれない。しかし、前述のように、例えとっさの時に人間の反射的動作である踏み込む動作をしたとしてもブレーキがかかるだけなので、惨事になる可能性は低い。

 松永氏は、ナルセペダルが普及するひとつのシナリオとして、海外からの逆輸入を挙げる。

「自動車メーカーに限らず日本企業は、既存のものを新しく変化させることに慎重です。しかし、欧米がこのペダルを採用して浸透すれば、日本のメーカーも採用せざるをえないでしょう」(松永氏)

 ナルセ機材の荒田晃慎氏によれば、「今年に入ってからの動きとして、中国・韓国・台湾でワンペダルを販売したいという注文がきています」。海外での販売も視野に入れているといい、今後、ナルセペダルの特許が切れれば、さらに後追いの海外企業勢が続くことが予測される。

 アクセルとブレーキの踏み間違い事故は、自分たちの命に直結することである。こんな重要なケースでも “欧米神話”の力を利用してしか事態を脱却できないのだとすれば、日本人は少々、情けないともいえる。