「AIは脅威」は間違い、人事部で広がるデータ活用人工知能と聞くと無機質で威圧的な印象だが、実際には人間の“作業”を負担してくれる優秀な存在だ

人がAIに仕事を奪われる時代が来ると言われている。しかし企業の人事部門にとって、AIはかけがえのないパートナーとなる可能性がある。本特集では、人事パーソンがAIを活用し、企業経営を劇的に変えて行くためのヒントを探る。(ダイヤモンド・オンライン編集部 松野友美)

AIは人間の仕事を奪うのか?
独り歩きする「人工知能」の怖い印象

「AI人事部」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。高度な知性を持つコンピュータが企業で働く人間の仕事を監督し、データを拠り所にして隙のない判断を下す。採用、評価、給与、人事異動などは機械が瞬時に決め、それに従う従業員たち。正確で公平な判断だが、それは膨大なデータから見出した人間には理解できない法則に乗っ取っている…。まるでSFのような話だが、そんなことが部分的には現実になろうとしている。

 企業の人事事務員が、将来、AI(人工知能)にとって代わられる可能性があるという研究結果が存在する。2015年12月に野村総研と英オックスフォード大学の共同研究によって発表されたものだ。その中では、人事事務員をはじめ、2030~40年頃には国内の601の職業のうち約49%が、人工知能やロボットに代替される可能性があるという見通しが語られている。

 こうした話を聞くと、今の職業から追われるのではないかと不安を覚える人事パーソンも少なくないだろう。しかし、世間で言われていることを鵜呑みにして、AIを人間に代わる働きをする「脅威」としてばかり捉えることは間違いだ。実はAIは、これからの人事パーソンにとって、かけがえのないパートナーとなる可能性がある。本連載で追っていくのは、人事部門がAIを活用し、企業経営を劇的に変えて行く未来の姿である。

 AI活用が進む欧米では「人工知能=とても優秀な計算機のようなもの」として捉えられており、人知を超えるものでは当然なく、あくまでツールだときちんと認識されている。AIに商機を見出すスタートアップベンチャーも続々と生まれている。小売店の店舗で、来客予測と売り上げを上げるために接客スタッフの立ち位置をAIで指南するシステムを開発したPercolata (パコラタ)や、営業マンの営業成績を入社時に予測するCangrade(キャングレード)などだ。