僕の分身である亮平を書きながら、何より僕自身が亮平から元気をもらった。書いてよかった、と明るい気持ちになれました。亮平のメッセージは、きっと読者を元気づけたり勇気づけたりしてくれるはずです。

──昭和25年当時と比べると、孤児は著しく減少しました。しかしながら、一方で子どもの貧困率は年々上昇し、親にたよれない子どもが増加しています。

『めぐみ園の夏』
高杉良
新潮社
1620円(税込み)

 世の中が荒んで殺伐としていませんか。陰湿なイジメ問題を云々するまでもなく、日本の社会にあたたかみややさしさが感じられなくなっているような気がしてなりません。この本を読んだ知り合いがびっくりして、「施設の子だったなんて信じられない。よくぞ書きましたね」などと電話をしてくるのですが、なかには電話の向こうで声をあげて泣いている友人もいました。亮平の元気を一人でも多くの人に伝えたい。そして、少しでもいいから将来に希望を持ってほしい。そんな願いもあって書いたのです。

──ところで、小学6年の夏にめぐみ園に入園した亮平は、中学1年の二学期の終業式のあと施設を出ます。そして実父と義母、義母の連れ子3人が暮らす東京・小岩の家に引き取られます。亮平の「その後」が気になって仕方ありません。

 もちろん僕も気になっています(笑)。続きを書く可能性はありますが、目先、以前執筆した『小説ザ・外資』の続編を小説雑誌に連載する予定があり、その準備をしているところです。亮平の「その後」に考えをめぐらせるのは、そのあとでも遅くはないでしょう。 

たかすぎ・りょう/1939年生まれ。出光興産をモデルにした『虚構の城』でデビュー。綿密な取材に基づき、リアリズムを追求した重厚な作品で経済小説の新境地を開く。『小説 日本興業銀行』『青年社長』『腐食生保』ほか著書多数