「病気やケガをして働けなくなったらどうしよう?」
そんな不安から、民間の医療保険や就業不能保険に加入している人もいるのではないだろうか。
たしかに、病気やケガをすると治療費がかかる一方で、仕事を休まざるをえないこともある。風邪などちょっとした病気で2~3日休むだけなら、年次有給休暇を利用すればいいが、病気が長引くとそうもいかない。
労働基準法で定められた年次有給休暇は勤続年数に応じて10~20日。がんや脳梗塞などになって長期療養が必要になると、あっという間に使い果たしてしまう日数だ。
そこで、「万一の長期療養に備えて民間保険に加入しておこう」となるわけだが、果たして、その保険が本当に必要なのか考える必要があるだろう。なぜなら、会社員の健康保険には「傷病手当金」という休業中の所得補償が用意されているからだ。
傷病手当金は健康保険の
創設当初から存在していた
傷病手当金は、労働者(会社員)が病気やケガをして仕事を休んで、勤務先から給料をもらえなかったり、減額されたりしたときの所得補償で、大正11年(1922年)4月に健康保険法が公布された当初から作られている。
当時は、タコ部屋労働に象徴される強制労働の撤廃などを巡って、激しい労働争議が行われていた時期だ。企業経営を持続させるためにも労働問題の解決は急務で、病気やケガなどをした労働者に医療給付をすることで生活を安定させ、貧困を防ぐために健康保険が作られたという経緯がある。