その時の協議の内容を文科省側がまとめたものが、今回の再調査で確認された文書だ。前次官自身も、協議が進められていた当時、首相補佐官や首相のブレーン役の内閣官房参与から、「総理は自分の口からは言えないから、私が代わって言う」などと、対応を求める働きかけを受けたという。

 また文科省の再調査では、実質的に加計学園しか応募できなくなるような、急きょ付け加えられた認可の要件作りを、官房副長官が主導していたことを示唆する文書が新たに見つかった。

 内閣府や官房副長官は否定しているが、文書や前川氏の証言通りだとすると、少なくとも首相周辺が「総理の意向」を振りかざし、具体化に向けて動いたことが浮かび上がる。

「総理の意向」を
個別問題で使うのは異例

 こうしたことは、霞が関において「日常」のことなのか。

 ある省の入省約20年の中堅官僚は言う。

「『総理の意向』や『総理マター』という文言は、何かをやろうとして、他省庁や省内で折衝する際に口にしたり、文書に書いたりすることは少なくはない。虎の威を借りるじゃないが、総理も同じことを考えているということにすれば、話が進めやすいからだ。相手側もその狙いを分かった上でやり合うのだけれど」

 だが、今回の場合は、異例さを感じる点が多いという。

「『総理の意向』を使う場合でも、例えば、岩盤規制に穴を空けるのは『総理の意向』といった一般的な言い方をするが、個別の問題で使うことはない。ましてや総理と親密な間柄の人の陳情案件のような問題で使われているのは、かなり筋悪だ」

 また別の省の幹部は「『総理は自分で言えないから、私が代わって』などと、首相補佐官が言ったのなら、忖度そのもの。役所では、(自分のポジションの)上の上の人が何を考えているか、その人の立場を念頭にいつも動けと教えられてきた。そして、二つ上の人は、そのまた上の上の人のことを考えて動くから、最終的には、大臣や官邸、有力政治家の意向や利害を考えて動くことになる。そういう体質、処世術が染み込んでいる。ましてや今の霞が関は、官邸の意向には逆らえない状況だ」

「官邸支配」のきっかけになったと、官僚が口をそろえるのが、第2次安倍政権で内閣官房に「内閣人事局」が作られたことだ。