清酒はもちろん、梅酒の扱いはウイスキーを抜き、日本酒の売り場はどんどん拡大した。刺し身や寿司は高値でも売れ、今まで日系小売業態に限った日本食の出店も、今や中国系ショッピングモールからラブコールがかかる時代になった。

 こうした底上げの背景にあるのは、「訪日旅行ブーム」であることは間違いない。上海で売られている日本ブランドは「日本で買えばもっと安い」のがバレたとはいえ、「旅行のとき日本で食べたあの味」を求める層は確実に増えている。

空気や街がきれいになり
非礼に対するおわびも

 一方で、上海の変化はスーパーの売り場だけに限らない。

「街では青空がよく見えるようになった」(上海在住の女性会社員)のも変化の一つだが、きれいになったのは空だけではない。

「若手が経営する飲食店では、安心して食事ができるようになった」と語るのは、北米に永住権を持つ上海華僑だ。衛生観念もだいぶ向上したようだ。確かに、上海のホワイトカラーが集まる主要なエリアでは、ゴミのポイ捨てもなくなり、眉をひそめる行為を目にすることはほとんどなくなった。

 また、すれ違いざまに肩がぶつかったとき、相手からの「対不起(すみません)」の声に、筆者は思わず振り向いてしまったことがある。「相手への詫び」ができないと言われ続けてきた中国人だが、これもまた若い世代を中心に変わりつつあるのだ。

 上海に住む若い人たちの意識は、明らかにそれまでのものとは違う。驚いたのは、車がほとんど通っていない横断歩道で、信号が変わるのをじっと待つ男性の姿だ。訪日旅行の帰国者の間で必ずと言っていいほど話題になるのが、「日本の交通マナーの良さ」である。歩行者に優しいドライバーの出現も、もう間もなくのことだろう。

 さらなる驚きは“日本人悪人説”はすっかり過去のものとなったことである。先日、南京西路を歩いていたら、若い中国人カップルに「こんにちは!」と日本語で後ろから呼び止められた。日本ファンなのだろう、彼らは純粋な気持ちで声を掛けてくれたのだ。筆者は「日本語で声を掛けてくるのは、たいてい物売りぐらいだ」と高をくくっていた自分を恥じたほどだ。