中国は改革開放政策をとって三十余年、人々の所得が向上し、生活水準も高まった。それに伴い海外旅行者も増えており、昨年、中国の海外旅行者数は1億人を越えた。そうしたなか、日本を訪れる中国人も多くなっている。2014年、日本を訪れた中国人観光客は前年に比べ28%増の240万9200人に上り、中国人の間では日本は人気の旅行先のひとつといえる。今年の2月に中国人観光客が便座を爆買いしたのは記憶に新しい。

中国人観光客で連日溢れかえる免税店、ラオックス銀座本店

 5月11日付け『環球時報』に法政大学の趙宏偉教授が書いた「日本観光の美景と幻覚」という文章が掲載された。この文章が掲載されるや、ネット上に広まり、記事を転載したいくつかのサイトは「93%の日本人、中国が嫌い」というタイトルをつけ、多くのネットユーザーの注目を集めた。

 文章は、現在日中両国は政治問題で関係が悪化しているにもかかわらず、なぜ日本に行く中国人が多いのかという疑問を投げかけている。なぜならば、93%の日本人が中国嫌いであり、彼らの多くが中国に旅行に行きたくないと考えているからだ、と続く。

 また、文章では、日本観光が中国人が思っているほどではなく、「幻覚」だと述べている。例えば、日本の景色はよいといわれているが、富士山などの有名なところはそうであっても、東京は道が狭く、建物が乱立しているだけだということや、日本料理はおいしいといわれているが、日本のいい店で使っている米は安物で、野菜は輸入物だということ、また、日本のサービスはレベルが高く、日本の店員は大変丁寧だといわれているが、彼らはただマニュアルに沿って動いているだけで、いわば「作られた行動」だという。

 さらに文章は、日本人は一部の中国人旅行者が派手に金を使う行為に対しいい印象を持っていないことも指摘している。

 そして、対中強硬姿勢をとる安倍首相の支持率が高いのは、民衆が彼を支持しているから。日本の政治動向に警戒する必要があるという言葉で結んでいる。ぱっと見たところ、反日の文章にも見えるが、その手の文章にありがちな根拠のない批判ではない。

93%が中国を「嫌い」な
わけではなかった

 ただ、この趙教授の文章に対し、疑問を投げかける文章があった。

 5月13日付けの『環球時報』に外交学院の周永生教授が「日本旅行の爆発的人気は幻覚ではない」と題する文章が掲載された。周教授の文章は趙教授のそれとは立場が違い、中国在住の中国人の視点から中国人の日本旅行について考えたものだった。