定額制の音楽配信サービスが、やおら注目を集めている。その火付け役となったのは、スポティファイ(Spotify)。先ごろアメリカに上陸したヨーロッパ生まれのサービスである。
スポティファイは、月契約で音楽を“聴きたい放題”で堪能できるオンデマンドのストリーミングサービスだ。毎月契約料を払えば、1500万曲のコレクションから楽曲をまるで湯水のように浴びることができる。毎月4.99ドルと9.99ドルの2種類の料金メニューがある。
前者と後者の違いは、データストリーミングの質とモバイルデバイス対応(後者はデバイス側に楽曲を保存してオフライン時でも聴くことができる)。もっとも、両者とも無制限に音楽を楽しめることに違いはない。CD1枚以下の値段で、知っている楽曲も、これまで知らなかった楽曲も、自分のものになるのだ。
さらに、スポティファイは無料で利用できるサービスも提供している。当初は、広告つきで無制限。ただし、6ヶ月を過ぎると、やはり広告つきで、1ヶ月間10時間制限つき、1つの楽曲のプレイ回数は5回までという条件がつく。アメリカでは現在、招待制でこの無料サービスを提供中だ。
スポティファイが注目を集めている理由は、まさにこの音楽のサブスクリプションサービスにある。
これまでのデジタル音楽は、楽曲ごとに購入して、自分のコンピュータに貯めておき、それをコンピュータやモバイルデバイスで聴いていた。アップルのiTunesストアで定着したこのサービスは、1楽曲あたりの値段を押し下げただけでなく、CDというひとまとまりの音楽の単位を陳腐化させてしまった。好きな時に好きな音楽を手に入れたいユーザーの人気が圧力になって、これまで音楽流通のあちこちで大きな利ざやを稼いでいた音楽業界は、ビジネスモデルの再考を迫られたのだ。
ところが、このスポティファイのサービスは、さらにその先を行く。