藤井 そうですね。学校に行くと時間的な制約がかなり増えますので、そういった点で高校進学については自分の中で迷う気持ちというのはあります。

井山 藤井さんの場合、もちろん勢いもあるでしょうが、ここまでくるのは実力がないと無理です。私の場合は、16歳のときに大会一回戦で当時の張栩名人と対戦して、戦う前の自分の状態は決して良くなかったのですが、それでも勝てた。勝つ前と後でそんなに棋力が上がるはずもないけれど、張栩名人に勝てたなら他の人にも勝てるだろうという変な自信が付いたのは大きかったですね。

藤井 自分は加藤一二三先生(九段。6月に引退)と対戦して勝つことができたのが大きかったかなと思います。勝負の上でメンタルも含めてすごく大きくて、デビュー戦で勝てたっていうことはすごく自信になりました。

対談後、井山六冠は真っ白な色紙に「雅」と、藤井四段は「無極」と揮毫した
いやま・ゆうた/1989年生まれ。大阪府出身。国内最強とされる六冠の囲碁棋士(九段)。12歳でプロ入りし、史上最年少の16歳4カ月でタイトルを獲得。26歳で史上初の七冠同時制覇。
ふじい・そうた/2002年生まれ。愛知県出身。16年に史上最年少14歳2カ月でプロ入りした将棋棋士(四段)。17年6月26日、公式戦無敗のまま連勝数で歴代単独1位となった。
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 ――2時間に及ぶ対談後、井山六冠は真っ白な色紙に流麗な筆運びで「雅」と揮毫した。「勝敗はもちろん大事だが、そういうことだけではない棋士の思いを込めて」と井山六冠。次の手を決断するとき、無難に逃げずリスクを背負い、自分の最善を信じて「打ちたい手を打つ」という美学を貫く。

 藤井四段が振るったのは「無極」の2文字。果てがないこと。もっともっと成長したいし、成長する。自らに限界をつくらない覚悟を込めた。まだ筆さばきはたどたどしいが、一文字一文字を丁寧に書き上げた。棋士は経験を積んで将棋の実力を高めるとともに、書の腕も磨かれていくものだ。

 7月3日(月)発売の『週刊ダイヤモンド』7月8日号では、両棋士の初対談を全10ページで独占掲載した。リアルな棋士人生を語る端々に両者の志が現れた対談は、何かを成したいと望む者に大いなるヒントを与えてくれる。